名古屋高等裁判所 平21年6月4日 判決

名古屋高等裁判所 平21年6月4日 判決

欠陥住宅の取壊し・建替費用相当の損害賠償を是認し、かつ居住者利益控除を否定した事例

品確法瑕疵担保責任に基づいて欠陥住宅の取壊しと建替えを認めた事案において、居住利益損益相殺の対象とならないとされた事例
(名古屋高裁 平成21年6月4日判決 棄却 消費者法)

1―事案の概要
買主Xらは、売主業者である不動産会社グループYらが建設し、販売した新築戸建住宅 (以下「本件建物という。)を、3,700万円で購入し、平成15年5月31日に入居した。ところが、本件建物には極めて重大な瑕疵があることが判明し、瑕疵修補を行うには、本件建物を解体し、再構築する以外に方法がなく、建替えが必要であるとして、XらはY らに対し、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求を提起し、原審(名古屋地判平成20年11月 6日)は、建物取壊し・建替え費用相当損害賠償を認容したが、Yらはこれを不服として控訴した事案である。

2―判決の要旨
控訴審裁判所は以下のとおり判示し、控訴人Yらの請求を棄却した。(1) 本件建物における瑕疵の存否及び建替えの要否証拠によれば、本件建物には、Xら主張の瑕疵があることが認められ、それらの瑕疵の修補を行うには、本件建物を解体し、再築する以外に方法がなく、建替えが必要であることが認められる。また、Yらのブレースによる補強のみで建物の安全性を確保できるか多大な疑問があり、さらに、耐震補強工事においてはマットスラブの補強が含まれていない ことを考え併せれば、瑕疵修補工事としては、およそ不十分なものと言わざるを得ず、採用できないというべきである。

① Yらの責任の存否
 売主業者Y1は、本件建物をXらに販売したものであり、住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」という。)88条 1項、民法634条2項により、瑕疵担保責任に基づいて瑕疵修補に代わるを負うことは明らかである。また、本件建物に存在するは極めて重大なものであって、建物として通常有するべき基本的な安全性さえ欠如するに至っているものであり、このような瑕疵の発生について、Yらに不法行為責任が認められることは明らかである。
② 売主業者Y1は、本件建物について、建売目的で自ら施主となって施工業者Y3に施工を、設計事務所Y4に設計及び施工監理を 請け負わせ、Y4に雇用されている設計士Y5を実務担当者として設計及び施工監理を行わせて建築し、これを買主Xらに販売したものであるところ、本件建物は新築住宅であり、また瑕疵の内容、部位、程度等からみて、瑕疵は、住宅の構造耐力上主要な部分として 品確法施行令で定めるものについての隠れた瑕疵に当たることが認められる。
③ Y1は、建物として通常有すべき基本的な安全性を欠如する本件建物を販売したこと について不法行為による損害賠償責任を負う。Y3は、建築基準法に定める基準に従い、 構造上の安全性のある建物を建築する義務を有するもので、Y4及びY5は、設計事務所として、また、一級建築士として、本件建物の 設計ないし施工監理を行ったものである。本件建物に存在する瑕疵は極めて重大であって、建物として通常有すべき基本的な安全性さえ欠如するに至っているものであり、瑕疵については、設計及び施工監理面においても、過失があったことは推認しうるものであり、それぞれ不法行為による損害賠償責任を負うというべきである。

損害賠償の範囲
①本件建物の取壊費用・・228万9000円
②本件建物の新築費用・・2184万円
③工事期間中のXらの仮住まい費用 120万円
④Xらの引越費用・・・・100万円
⑤登記手続費用・・・・・12万6930円
⑥調査費用・・・・・・・133万3500円
⑦慰謝料・・・・・・・・100万円
⑧弁護士費用・・・・・・250万円

居住利益について控訴人Yらは、Xらが、平成15年5月31日 から現在まで、本件建物に居住しており、この間、その使用についての重大な支障が具体 的に生じたことを認めるに足りる証拠はないから、損益相殺として、居住利益をXらの損害額から控除すべきであると主張するが、Xらは、本件売買代金を完済した上で本件建物に居住しているものであることや、本件建物の瑕疵の内容、部位、程度等は、構造耐力に係る建築基準法上の基準に適合しない重大なものであり、安全性を欠いた欠陥住宅であるといえる。Xらは、やむなくこれに居住しているものと推認できること(Xらが本件売買契約を解除しないからといって、この判断が左右されるものではない)等の事実関係の下 においては、Xらが本件建物に居住していることにつき、損益相殺の対象とすべき居住利益があるとすることはできない。

3―まとめ 最二小平成19年7月6日判決は、設計者、施工者及び工 事監理者は、建物の建築に当たり、契約関係にない居住者を含む建物利用者、隣人、通行人等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うとし、売主以外の建築に携わる者の責任を問う道を開いた。本判決は、この最高裁判決を踏まえ、品確法の瑕疵担保責任に基づいて欠陥住宅の取壊しと建替えを認めた事例判決と言える。 慰謝料まで認めた点も含め、建替えに関する損害賠償の具体的範囲及び水準について実務上参考となるものである。なお、本判決は、欠陥住宅に住み続けたこと(居住利益)を損害額から控除すべきであるとの被告の主張を排したが、この点に関しては、居住利益控除を肯定した例(東京高判 平14・1・23、5年間の居住利益500万円を控除。ちなみに、この上告審判決平14・9・ 24、判タ1106-85は建替え費用相当額の損害賠償を最高裁として初めて認めた。)と否定した例(大阪地判平10・12・18)とがある。本判決の上告審は平成22年6月17日、上告を棄却し、建物自体が社会経済的な価値を有しないと評価すべきときは、居住利益を控除できないとした。今後は、社会経済的な価値の有無の判断が論点となろう。

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