昭和39年6月24日 最高裁判例 過失判例2

昭和39年6月24日 最高裁判例 過失判例2

主文
本件各上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由  
上告代理人奥嶋庄治郎の上告理由について。  
未成年者が他人に加えた損害につき、その不法行為上の賠償責仕を問うには、未成年者がその行為の責任を弁識するに足る知能を具えていることを要することは民法七一二条の規定するところであるが、他人の不法行為により未成年者がこうむった損害の賠償額を定めるにつき、被害者たる未成年者の過失をしんしゃくするため には、未成年者にいかなる知能が具わっていることを要するかに関しては、民法には別段の規定はなく、ただ、この場合においても、被害者たる未成年者においてその行為の責任を弁識するに足る知能を具えていないときは、その不注意を直ちに被害者の過失となし民法七二二条二項を適用すべきではないとする当裁判所の判例( 昭和二九年(オ)第七二六号、同三元年七月二〇日第二小法廷判決)があることは、 所論のとおりである。しかしながら、民法七二二条二項の過失相殺の問題は、不法行為者に対し積極的に損害賠償責任を負わせる問題とは趣を異にし、不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、公平の見地から、損害発生について の被害者の不注意をいかにしんしゃくするかの問題に過ぎないのであるから、被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しないものと解するのが相当である。したがって、前示判例は、これを変更すべきものと認める。  
原審の確定するところによれば、本件被害者らは、事故当時は満八才余の普通健康体を有する男子であり、また、当時すでに小学校二年生として、日頃学校及び家庭で交通の危険につき充分訓戒されており、交通の危険につき弁識があつたものと推定することができるというのであり、右認定は原判決挙示の証拠関係に照らし肯認するに足る。右によれば、本件被害者らは事理を弁識するに足る知能を具えていたものというべきであるから、原審が、右事実関係の下において、進んで被害者ら の過失を認定した上、本件損害賠償額を決定するにつき右過失をしんしゃくしたの は正当であり、所論掲記の判例(昭和二八年(オ)第九一号、同三二年六月二〇日 第一小法廷判決)は事案を異にし本件の場合に適切でない。所論は、採用することをえない。  
よって、民訴四〇一条、九五条、九三条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、 主文のとおり判決する。
最高裁判所大法法廷
裁判長裁判官 横田 喜三郎 裁判官 入江 俊郎  裁判官 奥野 健一  裁判官 石坂 修一  裁判官 山田 作之助  裁判官 横田 正俊  裁判官 斎藤 朔郎 裁判官 草鹿 浅之介  裁判官 長部 謹吾  裁判官 城戸 芳彦  裁判官 石田 和外  
裁判官河村又介、同下飯坂潤夫は退官につき、署名押印することができない。          
裁判長裁判官 横田 喜三郎

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