最高裁 平成19年7月6日判例の引用判決

最高裁 平成19年7月6日第二小法廷引用判決

売主業者の説明義務違反による不法行為責任を否定し、 建物の瑕疵の一部についてのみ責任を認容した事例

建物の瑕疵を主張し調停を申し立てた買主 が、調停不調となったことから、売主業者に 対し、説明義務違反による不法行為責任、建物の瑕疵担保責任に基づく損害賠償等を求めた事案において、売主の不法行為責任を否定し、建物の瑕疵の一部について瑕疵担保責任を認めた事例(東京地裁 平成25年7月30日 判決)

1-事案の概要
平成15年6月、買主Xら(原告:夫婦共有) は、売主Y(被告)が開発分譲する土地を建築条件付として販売する旨の新聞折り込みチラシみて、現地を訪れ、購入の申込みをした。 同年7月、XらはYとの間で、代金8、600万円とする土地売買契約及び代金2、000 万円とする建築工事請負契約を締結した(本件土地に係る契約及び本件建物に係る契約を 併せて「本件契約」という)。建築工事に着工後、基礎底盤コンクリート強度について紛争が生じたが、Yが残代金から150万円を差し引くことで解決した。同年12月、Yは本件 土地及び建物を引き渡した。平成16年9月、Xらは、本件建物には41項 目にわたる瑕疵があると主張し、簡易裁判所に調停を申し立てたが、調停不調で終了した。 平成17年7月、Xらは、Yに対し、①Yは、本件契約の締結に当たり、宅建業法に基づく 手付解除に関する事項等の説明義務を怠り、契約から離脱できず損害を被った、②本件建 物には瑕疵があり、Yは、売主の瑕疵担保責任若しくは請負人の瑕疵担保責任に基づく損害賠償義務又は本件建物の施工者として安全な建物を引き渡す義務に違反した不法行為に 基づく損害賠償義務を負担している、③Yは、本件土地及び本件建物を建売住宅として販売 するつもりでありながら、本件土地が建築条件付宅地であるチラシを配布したり、本件土 地上の建築予定建物につき建築確認を取得する前に建売住宅としてチラシを配布するなど の宅建業法に違反する不法行為を行った等として損害の賠償を求めて提訴した。また、Xらは、本件訴え提起後、平成19年 11月の準備書面で本件建物の瑕疵調査費用を、平成24年8月の請求の趣旨変更申立書で 構造用合板、筋交い、柱と土台を緊結する金物等の施工等に瑕疵があるとして、これを補 修する費用を請求する旨の主張をした。
2-判決の要旨 裁判所は次のように判示して、売主の不法 行為責任を否認し、瑕疵担保責任の一部を認また、Xらは、本件訴え提起後、平成19年 11月の準備書面で本件建物の瑕疵調査費用 を、平成24年8月の請求の趣旨変更申立書で 構造用合板、筋交い、柱と土台を緊結する金物等の施工等に瑕疵があるとして、これを補修する費用を請求する旨の主張をした。
⑴ 不法行為(説明義務違反)について 被告会社が、本件売買契約の締結までに手付解除に関する事項の説明を取引主任者にさせていないことは争いがない。しかし、上記 宅建業法の定めの趣旨は、宅建業者に対し、 契約締結前に相手方に対して取引内容に係る 一定の重要な事項を説明させ、取引の相手が 取引内容を十分に理解した上で契約を締結することができるようにし、契約締結後に紛争が発生することを未然に防止することを目的とするものであり、同定めに違反して上記説明義務を履行しなかったことが直ちに相手方に対する不法行為を構成することになるものではない。そして、手付の授受がされた売買契約については、手付を放棄して契約を解除することができること(民法557条1項)は 取引社会においては一般に広く知られた事項であるし、原告らが相応の年齢の社会経験を 積んだ人物であることをも総合して勘案すると、被告会社が原告らに対して手付解除に関しての説明を行わなかったことによって原告らの法的利益が実質的に損なわれたと認めることはできず、被告会社の説明義務違反が原告らに対する不法行為を構成すると認めることはできない。(なお、事案の概要③の不法行為の主張も否定している。)
⑵ 建物の瑕疵についての小括 (Xらは、基礎コンクリートの強度不足、基礎寸法不足、筋交いの施工不良、アンカーボ ルトの不足、大引きと土台の緊結不良、その他ホールダウン金物の不足等、基礎・建物躯体に係る多くの瑕疵を主張している。)本件建物には、構造用合板、筋交い及び出 隅柱の緊結不良の瑕疵があり、本件契約が締結された当時、本件建物が着工すらされていなかったことから、これらは原告らが気づくことは不可能であり、いずれも隠れた瑕疵といえるが、その他の原告らの瑕疵の主張は、いずれも採用することができない。
⑶ 建物の瑕疵に係る不法行為について建物の建築に携わる者は、建物の建築に当たり、当該建物に建物としての基本的安全性が欠けることがないよう配慮すべき注意義務を負うと解するのが相当であるから(最高裁 平成19年7月6日第二小法廷)被告会社は、本件建物に居住用の建物としての基本的安全 性が欠けることがないよう配慮すべき注意義務を負う。本件建物には、耐力壁の施工不良 に係る瑕疵があり、また、出隅柱に耐力の低い金物が施工されているという瑕疵がある が、証拠及び弁論の全趣旨によれば、耐力壁 の施工不良に係る瑕疵については、施工不良 に係る耐力壁が耐力を持たなくても、本件建 物の基本的な安全性は確保されていることが 認められるし、出隅柱の金物に係る瑕疵については、同瑕疵の存在を前提として行われた 耐震診断の結果、耐震性については安全である旨の報告がされていることに照らし、本件 建物に建物としての基本的安全性が欠けていると認めることは困難であるから、被告会社 が注意義務を怠ったということはできない。
3  まとめ 買主は、建物工事の監査業務を設計事務所 に委託し、基礎工事時点で基礎底盤コンクリートの強度不足を主張し、売主が譲歩して金銭解決されている。物件の引渡しを受けた後 には、41項目にわたる建物の瑕疵を指摘し、本件訴訟を提起したものである。買主は、瑕 疵だけでなく、売主業者としての宅建業法上の説明義務違反による不法行為責任をも主張しているが、契約までの経緯・内容等から、不法行為責任を否定した裁判所の判断は妥当なものと思われる。しかし、解除に関する事 項を説明していなかったのは事実である。実務においては、どのような状況の中でも説明義務は果たしておかなければならない。基本を外さないことが何より大事である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です