杭データ偽装事件151021

杭データ偽装事件151021

横浜・都筑区のマンション傾斜:473本分データ一括提出 くい打ち改ざん見抜けず
毎日新聞 2015年10月20日 東京朝刊

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横浜市都筑区の大型マンションが施工不良で傾いている問題で、基礎のくい打ち工事をした旭化成建材が、約3カ月かけて打った473本のくい打ちに関するデータを一度に発注元の三井住友建設などに報告していたことが分かった。
くいを打った現場担当者が主に施工報告書にとりまとめ、現場責任者である別の旭化成建材社員がチェックしたが改ざんを見抜けず、承認していた。その後データの再確認に当たるべき立場の1次下請け・日立ハイテクノロジーズ社と元請け・三井住友建設も見抜けなかった。
旭化成建材は2次下請けとして2005年12月〜06年2月にくい打ち工事を実施。2チーム(各3人)がマンション4棟分のくい計473本を打った。親会社、旭化成の調査に1チームの現場担当者が「データを取れなかった」と説明する一方、データ改ざんについて「覚えていない」と話しているという。
旭化成によると、くい打ち工事については発注元からの要請や現場の判断で、1日〜数日ごとにデータを発注元に報告するケースもある。しかし、今回は約3カ月分を最後にとりまとめ、施工報告書として三井住友建設などに渡したという。
旭化成は、旭化成建材内でこまめにデータチェックがなされなかったことなどで改ざんが拡大したとみており「チェックやデータ管理のあり方に不備があった」としている。
三井住友建設は「現場の社員がくい打ちのデータを数日おきにチェックしていた。改ざん済みのデータを確認した可能性がある」としている。ただ、それでも最終的に報告書に添付されたデータから改ざんを見抜けず「管理監督責任は認める」としている。同社は今回の事案を受け、当面はくい打ち工事に社員を必ず立ち会わせることにした。
一方、三井住友建設は19日、傾いたマンション西棟の地盤調査を始めた。西棟には52本のくいが打ち込まれており、これまでに同社が調べた28本のうち8本が強固な地盤(支持層)に達していないなど不完全な状態。今回の調査は残りの24本が対象で、十分に支持層に打ち込まれているかどうかを確認する。
また、マンションを販売した三井不動産レジデンシャルは19日、「区分所有者、ご入居者の皆様には多大なるご心配、ご迷惑をおかけし、おわび申し上げます」とのコメントを出した。一連の問題発覚以降、同社がこうしたコメントを出すのは初めて。【岸達也、水戸健一、国本愛】

国交省、行政処分視野に調査

国土交通省は建設業法に基づき、施工会社の三井住友建設、下請けとしてくい打ち工事を担当した旭化成建材など、関係各社の当時の施工体制や状況について調べている。今後、調査の推移に応じて行政処分を検討する。
マンションは4棟で構成。傾きが判明した西棟では、基礎のくい8本が強固な地盤(支持層)に達しないなど不安定な状態だ。横浜市は建築基準法に基づき調査を進めており、建設業法を所管する国交省は▽どのような施工管理だったか▽誰が作業に携わっていたか−−といった点を中心に、関係各社から事情を聴く。
建設業法によると、業者が建築基準法などの他の法令に違反したり、契約に対し不誠実な行為が判明したりした場合、行政処分の対象となる。行政処分は、業務改善命令、1年以内の営業停止、建設業許可取り消しの3種類。
建築基準法などの他の法令に違反した場合は営業停止、他の法令に違反した上に情状が特に重いと判断される場合には許可取り消しになる。【坂口雄亮】 ■ことば
建設業法と建築基準法
建設業法は、建設工事の適正な施工の確保などを目的に、建設業の許可基準や建設業者への指導監督について規定している。建築基準法は、地震や火災などに対する安全性や良好な周辺環境を保つために、建築物の敷地、構造、設備、用途について基準を定めている。

西棟の杭6本が支持層に達せず

同マンションは、ウェストコート(西棟)、フォレストコート(森棟)、センターコート(中棟)、サウスコート(南棟)の4棟で構成されている。このうち傾斜が発見されたのは西棟。
西棟の杭52本のうち28本を調べた段階で、6本が支持層に届いておらず、2本は支持層に届いていたが深さが不十分だった。欠陥があった8本を含む計10本について、施工データが偽装されていたことが判明している。
なぜ杭が支持層に届いていなかったり、打ち込みの深さが不十分だったりしたのか。
仮に敷地の地表面が平坦であっても、地下深くにある支持層は平坦ではなく、凹凸がある。その状態を調べるためには、1カ所当たり10万円~20万円程度の費用がかかるボーリング調査を行う必要がある。同マンション西棟の場合、杭52本分で(1箇所あたり15万円として)約780万円かかるが、これを節約するため、あるいは工期がきつかったために、全数を調査していなかった疑いがあるという。
仮にすべての杭のボーリング調査を怠っていても、実際に杭を打ち込んでいるとき、先端が支持層に届かなければ長さが不足していることに気づくだろう。その段階で杭を継ぎ足していれば、問題にはならなかったはずだ。しかし、実際には施工データを改ざんしてしまったのである。
マンション管理組合の迅速な合意形成がカギ
建築&住宅ジャーナリストの細野透氏は、前ページ末尾リンクの「マンションを傾斜させた旭化成建材の罪深い行為」を執筆した翌日、にわかに胸騒ぎがして横浜市郊外に住む友人に電話した。すると、偶然にも同マンションの西棟で暮らしていると知る。
細野氏は執筆した記事を友人へ送り、友人を含むマンション管理組合各位に、役に立つ記事を書くという形でアドバイスした方がいいと考えたという。細野氏は続編のコラムで以下のように述べている。
「国交省と横浜市がきちんとした指示を出し、資金力がある三井不レジと旭化成建材が相応の責任を果たすと表明し、社会からの同情と関心も高い今、マンション管理組合として心がけるべきなのは、『禍いを転じて福となす』および『鉄は熱いうちに打て』ということわざです。具体的には、大きな原則を決めて、可能な限り迅速に行動することが大切かと思います」
続けて、マンション管理組合の核となる理事会のメンバーは、仕事を持っている人が多いため、今回の欠陥問題に全エネルギーを注ぐゆとりがないため、問題を迅速に解決できないだろうと危惧している。
「よって、管理組合と関係各社(三井不レジ、マンション管理会社、三井住友建設、旭化成建材)で『連絡協議会』を組織。協議会の下部組織として、関係各社の担当者を集めた『実務担当事務局』をおいて、問題の処理に必要な作業は彼らに依頼してはどうでしょうか」(細野透氏)
ここまでhttp://mainichi.jp/auth/guide.php?url=http%3A%2F%2Fmainichi.jp%2Fshimen%2Fnews%2F20151020ddm041040168000c.htmlより引用

建て替えにもハードル=同意8割、大型物件難しく—傾斜マンション・国交省
2015 年 10 月 20 日 06:31 JST 更新

横浜市都筑区の大型マンションが傾いた問題で、販売会社の三井不動産レジデンシャル(東京)は住民に全棟建て替えも提案しているが、実現には全住民の8割以上の同意が必要になるなどハードルは高い。建て替え完了まで数年かかり、住民の賛否も割れている。国土交通省幹部は「大型物件ほど住民の合意形成が難しくなる」と指摘する。
問題のマンション(705戸)は、4棟のうち1棟で傾きが確認され、くい打ちの施工データやセメント量の偽装が明らかになった。同社は全棟建て替えの他、仮住まい費用や精神的な負担への補償なども提案しているが、住民の40代男性は「建て替えは満額回答だと思ったが、反対する人が意外と多い」と不安げだ。50代の男性会社員は「補修なら転居を考えている。会社側の補償も無限ではない」と語る。
傾斜が判明した棟に住む男性(66)は建て替えに否定的。「ついの住み家と思って買ったのに、仮住まいに移り70代になって戻ってくるなんて想像がつかない」と肩を落とす。
同省によると、マンションを建て替える際は区分所有法に基づいた住民の決議が必要。全棟建て替えの決議には、全住民の5分の4以上かつ各棟の3分の2以上の同意がなければならない。
国内には現在約613万戸のマンションがあるが、阪神大震災で被災し建て替えた109物件を除き、1975年〜今年4月に建て替えが実施されたのは211物件、約1万6600戸にとどまる。住民の権利移転をスムーズにするマンション建て替え円滑化法が2002年に成立し、適用件数も増えているが、決議に時間がかかるのが現状という。
老朽化が理由の建て替えでは、住民が準備組合をつくり、合意形成を図るのが大半。決議を得ても、一時転居や取り壊し、新たな工事などに平均で2年10カ月程度かかるという。
国交省幹部は「住民の立場や考え方はさまざまで、短期間にはまとまらない。今回と同規模の大型物件でも建て替えたケースはあるが、合意形成に時間がかかっている」と語った。 
[時事通信社]
ここまでhttp://www.jiji.com/jc/zc?k=201510/2015102000055より引用

国交省、宅建法違反でも調査…マンション傾斜
2015年10月19日 22時07分

横浜市都筑区の大型分譲マンションで基礎工事の施工不良が見つかった問題で、国土交通省は19日、施工会社などの建設業法違反の疑いに加え、マンションを販売した三井不動産レジデンシャル(東京都中央区)についても宅地建物取引業法違反の疑いがあるとして調査していることを明らかにした。
今後、行政処分が必要か検討する。
宅建業法の規定では、取引関係者に損害を与えた時などは処分の対象となる。
三井不動産レジデンシャルは、傾いていない3棟を含め全4棟の建て替えを基本的枠組みとして住民に提示しているが、住民の損害の大きさと補償の程度などが処分のポイントになる。
一方、建設業法違反で同省が調査しているのは、元請けの三井住友建設(中央区)、下請けの日立ハイテクノロジーズ(港区)と杭(くい)打ち工事を請け負った旭化成建材(千代田区)の3社。
ここまでhttp://www.sankei.com/affairs/news/151020/afr1510200002-n1.htmlより引用

販売会社を宅建法違反疑いで調査 国交省

横浜市都筑区のマンションが傾いている問題で、販売した三井不動産レジデンシャルが宅地建物取引業法に抵触する疑いがあるとみて、国土交通省が調査していることが19日、同省への取材で分かった。基礎部分のくいの一部が強固な地盤に届いていないマンションを販売したことが、同法に抵触する可能性があるとみている。同社は同日、この問題についてコメントを発表し、住民への対応について「全棟の建て替えを基本的枠組みとして今後協議する」と正式に表明した。
宅建業法は、宅建業者が取引関係者に損害を与えたり、取引の公正を害する行為をしたときなどは、国が業者に対し指示や営業停止の処分をできると定めている。
国交省は「三井不動産レジデンシャルが販売時にマンションに瑕疵(かし)があることを知っていたかは関係ない」としており、今後、住民への損害が発生するかどうかを注視していく。
問題のマンションでは、傾いた棟を含む3棟の38本のくいで地盤の強度データが改竄(かいざん)され、重複する13本を含む45本でセメント量が改竄された。
同省は施工主の三井住友建設やくい打ち施工をした旭化成建材などを建設業法に抵触する疑いがあるとみて調査。横浜市は建築基準法違反の疑いがあるとみて調べている。
ここまでhttp://www.sankei.com/affairs/news/151020/afr1510200002-n1.htmlより引用

住宅の果たす役割、考えよう
2015年10月19日

大学1年生のころ、アルバイトでマンションのモデルルームの受付をしていました。現在は住宅展示場内のモデルハウスで受付をしていますが、共通して言えることは「住宅は夢の詰まった商品」。きらきらと輝くお客さまの目。幸せそうな家族。「住」は生活の基本であり、住まいを提供する販売会社も消費者の生活を担っていることを自覚しながら営業をしている。そう信じていました。
それだけに横浜市都筑区の大型分譲マンション(全4棟)で基礎工事の施工不良が発覚した問題は、とてもショッキングでした。販売会社の三井不動産レジデンシャル(東京都中央区)などは19日にも、傾きが確認された西棟(11階建て)で、建物を支える杭が固い地盤に到達しているかなどを確認する地盤調査を再開します。日本経済新聞によると、国土交通省は建設工事を請け負った三井住友建設や、基礎の杭打ち工事を担当した2次下請けの旭化成建材について建設業法違反の疑いがあるとして、行政処分の検討に入っています。同省の担当者は「元請けや1次下請けによる工事の管理体制が適切だったかどうかも含めて調査し、処分を検討する」としています。
調査が進むなかで、住民の不安は募るばかりです。「信頼して大手の物件を買ったのに裏切られた気持ち。『安全です』と言われても、もはや信用できず、引越しを検討している」。憤りを隠せないでいます。三井不動産レジデンシャルは住民に対し、全4棟の建て替えを提案していますが、工事には3年以上かかるとの見方もあります。本当に住民にとって最善策なのかどうかは疑問です。
「どんな家に住もうかな」。消費者の輝く目からは、下請け会社のデータ改ざんなど見えるはずもありません。販売会社ですら見抜けなかった問題なら尚更です。マンションにしろ、一戸建てにしろ「住宅は人の命を預かる商品」であり、一生に一度の買い物だということ。たった一人の不正行為で会社ばかりか社会全体に甚大な被害を及ぼすこと。しっかりと考えていれば、今回のような不祥事は起こらなかったでしょう。夢を売る側が意識しなければならないことは何なのか。このニュースから深く考えさせられました。
ここまでhttp://allatanys.jp/blogs/1478/より引用

横浜の傾斜マンション、杭70本でデータ改ざん-国交省が会見
掲載日 2015年10月20日
三井不動産レジデンシャルが2006年に販売した横浜市内の大型マンションが傾いている問題で、国土交通省は19日会見し、関係事業者から現時点で計70本の杭でデータ改ざんの報告があったと説明した。内訳は、杭が支持層に届いたかを判断する電流計のデータ改ざんが杭38本。杭の先端部を覆って固める部分に注入するセメント量の改ざんが杭45本。重複が13本あった。
関係事業者は、マンションを販売した三井不動産レジデンシャル、マンション施工の元請けの三井住友建設、1次下請けの日立ハイテクノロジーズ、2次下請けの旭化成建材。国交省は事実関係の調査や原因究明、新たな問題の有無などの報告を指示したことを明らかにした。
また、国交省は今回の問題で宅地建物取引業法(宅建業法)、建設業法、建築基準法との関係を説明。各法で処分に相当する可能性があるか検討する。宅建業法では、取引関係者に損害を与えた時または損害を与えるおそれが大きい時は処分理由となる。建設業法では、請負契約に関し不誠実な行為をした時などが処分理由にあたる。
ここまでhttp://www.nikkan.co.jp/news/nkx0920151020acbv.htmlより引用

マンション傾斜 販売会社も法抵触疑い 宅建業法、国交省が調査
産経新聞 10月20日(火)7時55分配信

横浜市都筑区のマンションが傾いている問題で、販売した三井不動産レジデンシャルが宅地建物取引業法に抵触する疑いがあるとみて、国土交通省が調査していることが19日、同省への取材で分かった。基礎部分のくいの一部が強固な地盤に届いていないマンションを販売したことが、同法に抵触する可能性があるとみている。同社は同日、この問題についてコメントを発表し、住民への対応について「全棟の建て替えを基本的枠組みとして今後協議する」と正式に表明した。

宅建業法は、宅建業者が取引関係者に損害を与えたり、取引の公正を害する行為をしたときなどは、国が業者に対し指示や営業停止の処分をできると定めている。

国交省は「三井不動産レジデンシャルが販売時にマンションに瑕疵(かし)があることを知っていたかは関係ない」としており、今後、住民への損害が発生するかどうかを注視していく。

問題のマンションでは、傾いた棟を含む3棟の38本のくいで地盤の強度データが改竄(かいざん)され、重複する13本を含む45本でセメント量が改竄された。

同省は施工主の三井住友建設やくい打ち施工をした旭化成建材などを建設業法に抵触する疑いがあるとみて調査。横浜市は建築基準法違反の疑いがあるとみて調べている。
ここまでhttp://www.sankei.com/affairs/news/151020/afr1510200002-n1.htmlより引用

【マンション業界の秘密】

新築マンションの広告にタレントやアニメキャラクターが起用されることが多い。なぜか。理由は、単純に目立ちたいからだ。有名な女優が起用されていても、そのマンションに住むわけではない。広告のイメージキャラクターとその物件は、基本的に何の関係もない。
業界のこぼれ話としてはいろいろある。ある有名なプロゴルファーが起用された物件は、彼の父親が一室を要求したとか、アメリカから呼び寄せた超有名女性歌手は、スポンサーの食事の誘いを「それは契約書に書いていない」と断ったとか。まぁ、この業界ならではのコントだ。
新築物件の広告費というのは膨大だ。目安としては1戸当たり100万円。500戸のマンションなら5億円の予算がある。タレント起用に1億円をつぎ込んでも、まだ4億円使える。1000戸なら10億円。外国の超有名タレントに数億円を費やすことも可能だ。
ただ、タレントを起用するにはワケがある。普通に広告をして売れる物件なら、わざわざタレントやアニメキャラクターを起用する必要がない。
業界では、こういうタレントを「人寄せパンダ」と呼ぶ。とにかく目立って人が集まればよいのだ。あとは営業担当者がトークで何とか契約までもっていく。
イメージキャラクターが起用されている場合、疑ってかかる必要がある。そういった派手な広告をしなければ人を集められない物件である可能性が高いのだ。
マンションというのは、分かりやすい商品である。その資産価値の9割までが立地で決まる。また、その立地条件の9割までは、駅からの徒歩分数だ。つまり、どこにできて駅から何分か、という単純な要素で、資産価値の8割は決まっている。一般の方でも、そこを外さなければ失敗しない。
ところが、マンションを売る側にとっては、ここが一番ごまかしたいところ。人気のないエリアで駅から遠かったりすると、何とかそこから目をそらすためにイメージキャラクターを起用する。残り2割の要素を、タレント起用でイリュージョン(幻影)的に膨らませて、消費者をだまそうとするのである。
一時期、新築マンションの広告にタレントを起用する手法はなりをひそめた。だが、最近また復活している。この業界、他社の成功例に一斉に追随する傾向にある。注意してほしい。
新築マンションを買う時点では、タレントが好イメージを発信しているが、その物件を購入して10年後に中古で売却するときには誰も応援してくれない。広告費もかけられないだろう。ただの「○○駅徒歩〇分、〇LDK○平方メートル××××万円」の中古マンション。そういったことをイメージしながら選ぶべきだ。
今まで私の知るなかで、広告に登場したタレントが、そのマンションに住んだ例は1つもない。イメージは、あくまでもイメージなのだ。
■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。不動産会社の注意情報や物件の価格評価の分析に定評がある(WWW.SAKAKIATSUSHI.COM)。著書に「年収200万円からのマイホーム戦略」(WAVE出版)など。
引用先削除により不明

郷原信郎
2015年10月19日 10:33
「姉歯事件」より重大・深刻な「マンションデータ偽装問題」

横浜市内の大型マンションが傾いた問題で、建設時の杭打ち工事で、建物の基礎となっている複数の杭が強固な地盤に届いておらず、杭打ちのデータに別の工事のデータが転用されていたことに加え、セメント注入量まで偽装されていたことが明らかになった。
デベロッパーは三井不動産レジデンシャル、元請け施工が三井住友建設、下請けが日立ハイテクノロジーズ、杭打ち工事を行った孫請けが旭化成建材と、いずれも日本を代表する企業ないし子会社であり、日本の企業のコンプライアンスが問われる事態に発展している。
同じようにマンション等の建築をめぐって発生した問題に、2005年11月に表面化した姉歯元一級建築士による耐震強度構造計算書偽装事件(「姉歯事件」)がある。この問題は、日本社会全体を巻き込む大きな問題となったが、その多くは、建築基準法に対する無理解、建物の耐震性についての誤解によるものだった。姉歯事件と比較すると、基礎となる杭が地盤に届いていないという現実的な瑕疵の問題であり、少なくとも「建物の傾斜」という実害が発生している点において、「計算上の耐震強度」の問題で、建物の実害も発生しなかった姉歯事件より重大かつ深刻である。
むしろ、設計段階の問題であった姉歯事件をめぐる騒ぎの中で、施工段階における真の問題が見過ごされてきたことが、今回の問題の背景となったとみることもできる。
改めて姉歯事件をめぐる問題を振り返りつつ、今回の問題を考えてみることとしたい。
姉歯事件では、国交省が問題を公表した後、建築基準法に定められた耐震基準を満たさないマンションやホテルなどが全国各地で建設されていた事実が次々と明らかになった。国交省が、耐震強度が大幅に偽装された建物の使用を禁止したことで、住民がマンションからの退去を余儀なくされるなど、大きな社会問題となった。
この事件では、構造計算書を偽装して耐震強度を実際より高く見せかけようとした姉歯元一級建築士のほかに、構造計算書の偽装を見抜けなかった指定確認検査機関、姉歯氏の構造計算によって多数の低価格マンションを建設・販売して急成長した不動産業者、建築施工業者など関連する業者の責任が次々と問題にされ、これらの関係者の多くが、刑事処罰まで受けた。
この事件を受けて、国交省は、耐震強度偽装の再発防止のための建築基準法の改正を行い、建築確認について厳格かつ煩雑な手続を規定した。そのため、建築確認申請の手控えや審査手続きの大幅な遅延につながり、マンションや住宅などの建築が一時的にストップし、住宅着工件数が激減、建築・不動産をはじめ関連業界は大変なダメージを受けた。法改正後の建築件数の大幅な減少の影響を受けて倒産する企業も出て、日本の建築業界は、リーマンショックの前から深刻な不況に見舞われた。
このように、社会的にも、経済的にも、かつてない程の重大な問題に発展した耐震強度偽装事件だったが、実は、この問題に対しては大きな誤謬があり、まさにこの問題に関して社会が「思考停止状態」であったことを、拙著「思考停止社会~遵守に蝕まれる日本」(講談社現代新書:2009年)で指摘した。
若干長文になるが、拙著の該当部分をそのまま引用する。
そもそもこの問題が起こった背景には、建築基準法というのが何のための法律で、それを社会で活用していくために、どういう方向で法律を運用していったらいいのかという基本的な視点の欠如がありました。

この法律は、「建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準」を定めるものであり、建築確認制度というのは、建築士が設計を行っていることを前提に、行政においても事前に最低限の設計図上のチェックを行うという趣旨で設けられた制度でした。
この制度ができた終戦直後、もともと予定されていたのは、木造の一戸建てのような単純な構造の建築物でした。しかしその後、経済の発展に伴って、建築技術も飛躍的に進歩し、建築物も高層・大規模化し、複雑で多様な構造のビルが建築されるようになったため、建築士の設計と建築主事の建築確認によって安全性を確保するというこの制度は、大規模建築については形骸化してしまいました。
それにもかかわらず、一般の人には、建築確認が、現在のような高層化・複雑化した建築物についても安全性を確保する役割を果たしているように誤解されてきました。建築基準法による建築確認という制度が果たしている役割について、一般人の認識と実態との間に大きなギャップが生じていたのです。
特に、建物の耐震性能という面では、建築確認はほとんど安全性の確保の機能を果たしていませんでした。多くの人は、地方自治体や民間建築確認機関による建築確認が行われた以上、耐震性能が建築基準法の基準を充たしているものと信じていましたが、複雑で高度な建物の耐震強度の確認というのは、設計図上の建築確認という手続で確かめられるような簡単なものではありません。耐震強度の構造計算は、あくまで一つの計算方法であり、実際の地震による倒壊の危険は敷地の地盤などの自然条件によっても異なります。また、設計上問題はなくても、その設計図通りに施工しない手抜き工事が行われる危険性をなくすことはできません。
しかし、建築確認が形骸化していたからと言って、日本の大規模建築物の安全性が低かったということではありません。阪神淡路大震災のような極端な場合を除けば、日本の建築物の安全性に重大な問題が生じることはなく、全般的には高い水準に保たれてきました。それは、設計者、施工会社の信用が大切にされ、技術者の倫理観がしっかりしていたからです。
つまり日本の建築物の安全性は、従来から、建築基準法という「法令」や建築確認という「制度」ではなく、会社の信用と技術者倫理によって支えられてきたのです。
ところが、1981年の建築基準法の改正で新たな耐震基準が導入された際、その基準は既設建築物には適用されず、それ以降のものだけに適用されたために、周囲に耐震性の低い建物がゴロゴロしているのに、新たに建てる建物だけは高い耐震性を要求されることになりました。
このことが、耐震性能に関して建築基準法の基準の性格を非常に曖昧なものにしてしまったことは否めません。「最低の基準」なのであれば、絶対に充たさなければならない基準という認識で設計・施工が行われ、設計者・技術者の倫理観も十分に働くはずですが、基準が充たされていない建築物が実際には周りに多数あるということであれば、絶対的な基準という認識は希薄になってしまいます。
その後、1990年代に入ってから、民間の建築業界の価格競争が激化して、極端な安値受注が横行し、そのしわ寄せが施工の現場を直撃しました。結果、工事の質を落として採算を確保しようとする手抜き工事、粗漏工事が横行したと言われています。設計の段階で耐震基準を充足していても、施工段階で強度不足の建物が建築される危険性は全般的に高くなったのです。こうして、実質的に建物の安全性を確保するためのシステム全体に綻びが生じる中で、一人の無責任極まりない建築士によって多数の建物の構造計算書を改ざんするという、露骨な「違法行為」がいとも簡単に行われたのが耐震強度偽装事件です。
この事件が、社会に大きな影響を及ぼす騒ぎに発展する原因となったのは、強度が偽装された建物の使用禁止と取り壊しを命じた国土交通省側が発した「震度5強の地震で倒壊の恐れがある」という言葉でした。震度5強というと、地震国日本ではかなり頻繁に起きる地震です。その程度の地震で、建築された建物が「倒壊」してしまう恐れがあるということで、国民の関心は「強度が偽装された建物」に集中しました。
「耐震強度偽装」という違法行為がマスコミにセンセーショナルに取り上げられ、多くの人は、強度を偽装された建物だけが、ちょっとした地震でガラガラと崩れおちてしまい、中にいる人が押しつぶされてしまうように誤解しました。
1981年以前に建築された建物には、問題になった耐震強度が偽装された建物より耐震性の低いものも多数あり、もし、耐震性が低い建物の存在が問題だというのであれば、日本中の多数の建物の使用を禁止しなければならなかったはずですが、社会の関心は、偽装行為を叩き、偽装の再発を防止することばかりに向けられてしまったのです。
問題の核心は、建築基準法という法令に基づく建築確認の手続に関して、耐震強度の「偽装」という行為が行われたことが明らかになったことでした。多くの人々が、建物の安全性を確保する役割を果たしていると思っている法令上の手続に関して偽装を行うというのは、水戸黄門の印籠に泥を塗るような行為というイメージでとらえられたのです。
国交省としても、そのような許し難い行為によって建築された建物は有無を言わさず取り壊しを命じることになります。それが、入居したばかりのマンションから多額のローンを抱えたまま退去しなければならない、という社会的に許容し難い事態を発生させ、それに対する怒りが、そのような事態を招いた耐震強度偽装行為に関わった者を厳罰に処し、その再発防止のためであればあらゆる手段を講じるべき、という論調につながっていったのです。
要するに、姉歯事件は、「建築物の敷地・構造・設備・・用途に関する最低の基準を定める」という建築基準法という法律の性格が理解されず、その法律によって定められた「耐震強度」によって、建物の安全性が確保されているように誤解され、それに、国交省側の「震度5強で倒壊の恐れ」という無神経な発言があって、マンションの使用禁止等の事態に発展し、日本社会に重大な影響を与えた。
しかし、その後発生した東日本大震災においても、強度が偽装された建物が倒壊したという話は全く聞かない。結局、姉歯事件で問題にされた「耐震強度」は実際の地震における安全性には直結しないものだった。
一方、今回の問題では、「大規模な構造物の基礎は強固な地盤で固定されなければならない」という、建築物の敷地・構造・設備・・用途に関する「最低の基準」に関する問題で、「建物が傾く」という実害が発生しているのに、姉歯事件のような建物の使用禁止等の措置はとられていない。
「改めて構造計算を行ったところ、耐震性には問題はなかった」とされているが、セメント注入量の偽装が発覚する前のことである。しかも、マンションの販売担当者は、廊下の手すりの高さに差があるとの当初の住民の指摘に対して、「東日本大震災でズレた」と説明していたのである。耐震性に問題がないとの説明も額面どおり受け止めることはできないように思える。
他方、両者に共通しているのは、問題の背景や構造に目を向けることなく、「偽装」という個別の行為に問題が限局されようとしていることだ。
姉歯事件で、「耐震強度偽装」という違法行為を行った者や、その行為に関わった者の処罰と偽装の再発防止措置をとることに社会の関心が集中したのと同様に、今回の問題についても、「データ偽装」という不正行為にばかり焦点があたっているように思える。
それを象徴するのが、データ偽装が明らかになった直後の証券市場での関連する会社の株価の動きだ。報道初日は、元請の三井住友建設の株価がストップ安の暴落となったが、翌日、データ偽装が、孫請の旭化成建材の社員による行為であることが明らかになるや、同社の親会社の旭化成の株価が暴落、逆に、三井住友建設の株価は大幅に値を上げた。
「データ偽装」を行った会社がすべての責任を負担することを前提にしているかのような株価の動きの一方で、マスコミ報道でも、「改ざん(偽装)を行ったのは、すべて一人の現場代理人であること」が強調されている。
確かに、現場代理人は、工事の品質に絶対的な責任を負うべき立場の技術者であって、その立場の人物が、建物の基礎に関わる工事のデータを意図的に偽装するということは凡そ考えられないことだ。
しかし、今回の問題は、単に、データの管理の問題ではない。杭が強固な地盤に未達だったことからデータ偽装が行われたことは明らかであり、その事実を隠蔽しようとする意図があったとしか考えられない。
「杭の地盤への未達」の事実を知りながら、それを是正しようとせず、データを偽装するという行為が、いかなる動機で行われたのか、そこにどのような事情があったのか(「杭の地盤への未達」未達を明らかにすることが、当該現場代理人又はその会社にとって、どのような不利益があったのか)を解明することがまず必要だ。
杭打ち工事を孫請けした企業だけではなく、建築工事全体を施工した元請建設会社等の施工管理上の問題、或いは、デベロッパーによるマンション建設の事業計画自体に問題があった可能性もある。
そもそも、建築工事・土木工事においては、当初想定していた条件とは異なった施工条件が施工の段階で判明することは避けられない。その対応に大きなコストがかかるものであった場合に、追加費用を誰がどのように負担するのかについて明確なルール・基準が設定され、適切な対応ができる予算上の余裕が設定されていなければならない。そうでなければ、立場の弱い下請け企業に負担が押し付けられ、その負担を逃れるために、不正が行われるということになりかねない。
前掲拙著で述べたように、姉歯事件では、耐震強度偽装にばかり関心が向けられ、「手抜き工事・粗漏工事が横行し、耐震性が不十分な建築が野放しになっている実態」には目が向けられることはなかった。そのような状態が継続していたところに、その後の建築業界をめぐる極端な人手不足・工事採算の悪化が加わり、状況が一層深刻化したことが今回の問題発生の背景になった可能性もある。
いずれにしても、まずは、「データ偽装」を行った現場代理人の動機や事情を徹底解明し、その背景を幅広く深く調査し、真の原因を究明する必要がある。
多数の企業、官公庁等の組織に関係する問題だけに、当事者企業の内部調査だけでは十分な事実解明や原因究明は期待できない。
国交省が、第三者も含めた調査体制を構築することも含めて、主体的に調査に関わることが不可欠である。
ここまでhttp://blogos.com/article/139914/より引用

文責 釈迦牟尼仏(ミクルベ) 建太

次回に続く(杭データ偽装事件151022

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