杭データ改ざん事件151210

杭データ改ざん事件151210

広がる“杭打ちデータ改ざん”の波紋!根本にある問題とは

過去10年間の旭化成建材による杭打ち工事で、300件前後のデータ改ざんがあるという疑いが浮上してきたようです。また、改ざんに関与していたのは一人ではなく、10人以上もいるとのこと。こうなると、旭化成建材への批判が高まるのはもちろん、ますます業界全体に対する不信感が広がってきます。この問題の根本にはいったい何があるのか、そして建物の安全性はどうなのか。今回はこの問題について、工事現場の実情を紹介しながら客観的な観点で検証してみましょう。

データの改ざん流用手抜き工事はイコールではない

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↑データ改ざん自体は、問題ではない
まず、データの改ざん流用は、何の目的で行われていたのか。敢えて誤解を恐れずに言うなら、“形式的”な書類を揃えるためです。つまり、背景には「とりあえず」必要書類が揃っていれば良いという環境があるわけです。極端な話、形だけの流れ作業だから誰もちゃんと中身をチェックせず、確認するのは必要な書類が揃っているかどうかだけ。それ故に、今回のように不具合が目に見える形として現れるまで、「データの改ざん」が発覚しなかったのです。
しかし、データの改ざん流用といった行為と、不適切な杭打ち工事は必ずしもイコールでありません。そもそも、目的がまったく異なります。便宜的な提出書類を揃えるためのデータの改ざん流用と、手抜き工事を隠蔽する目的で虚偽のデータを捏造する行為とは別けて考えるべきです。これを同じ土俵で議論しようとすれば、闇雲に根拠のない不安を煽る結果になってしまいます。

現場作業員がプロの職人であるかどうか
現在住んでいるマンションや、購入を検討しているマンションは大丈夫なのか。多くの人がそんな不安を感じておられるでしょう。しかし、杭打ちデータの改ざん流用が行われた建物だからといって、必ずしも不具合が生じるとは限りません。
そもそも提出されたデータは虚偽なのですから、実際の杭打ちとイコールではありません。つまり、データは虚偽でも、実際の現場では適切に杭打ちがなされている可能性も考えられます。
では、虚偽のデータとは関係なく適切に杭が打たれているとすれば、どのようなケースが考えられるのか。それは、杭打ちの作業員が腹の座った「プロの職人」である場合です。仮に何らかの理由でデータが採れなかったとしても、「プロの職人」である作業員には関係ありません。
彼らにとって大事なのは、責任と誇りを持って自分たちが成すべき仕事をすること。ですので、彼らにとってもまた提出用のデータは便宜上のものでしかなく、現場責任者が報告する書類については「我関せず」なのです。しかしそれは、現場責任者作業員たちの信頼関係が構築されているという前提での話です。つまり、データ改ざん流用の目的があくまでも便宜的な書類提出のためであり、不適切な工事を隠蔽するためではないことが明白でなければなりません。そうでなければ、「プロの職人」たちは黙っていません。手抜き工事をすることは、彼らのプライドが許さないのです。
しかし現場の作業員がプライドを持った「プロの職人」ではなかった場合、「我関せず」というスタンスが裏目に出ます。お互いに慣れ合いになり、楽に仕事を済ませようとする暗黙の空気が出来上がってしまうからです。目先の楽さや損得を優先して、責任や誇りをかなぐり捨ててしまうわけですね。実はこういった現場の空気が、最悪のケースを生む大きな要因になるのです。

工事現場の基本的な構成

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参考までに、杭打ち工事における基本的な構成をご紹介します。
元請け会社 ⇒ 一次下請け(現場責任者) ⇒ 二次下請け(現場監督) ⇒三次下請け(現場作業員)
工事の規模などによってケースバイケースですが、大体はこういった流れです。一次と二次が同じ会社というケースもよくあります。
現場で作業をする杭打ち機のオペレーターやその他の作業員は、三次下請けの立場です。現場監督と呼ばれる人は二次下請け会社の社員で、現場の規模によって2~3人の補助スタッフがいます。そして一次下請け会社の社員が数名いて、そのトップが現場責任者として工事現場の指揮をとるわけですね。工事の品質に最も大きな影響を及ぼすのは、現場責任者現場作業員のコミュニケーションの密度と信頼関係の有無です。
では元請け会社の社員は何をしているかというと、事務所で事務仕事をしています。定期的に現場に足を運んで、工事の進捗状況や安全対策の確認をする程度で、元請けの所長(最高責任者)が現場に出向くことは滅多にありません。ただ、これはそれぞれの役割が違うということであって、元請け会社の社員が現場に足を運ぶ頻度が工事の品質に直接影響するわけではありません。
現場責任者の資質とその役割

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↑信頼関係を築くことが、現場責任者の最も大事な役割
現場と元請け会社をつなぐパイプ役が、現場責任者の重要な仕事です。各種提出書類の作成は一次下請け会社の社員が行い、そのトップである現場責任者が元請け会社に提出します。通常は毎朝元請け会社の事務所で朝礼兼会議があり、そこで進捗状況の報告がなされ何か問題があれば協議されます。
元請け会社が最も恐れるのは、人身事故。工事現場には多くの危険がありますから、安全管理は最重要事項なのは当たり前のこと。それに、人身事故の発生は所長の社内評価に大きく響きますからね。
次に元請け会社が重視するのが工事の進捗状況なのですが、しかし無闇に工事の遅れを咎めるようなことはしません。それよりも重要なのは、工事の品質が保たれているかということです。そして、定められたルールに従って工事が行われているかということ。
資材を置く場所や向き、重機用の鉄板の敷き方など細かく決められています。もちろん、これには安全対策という意味もが含まれています。これらの事がしっかり管理実行できているかどうかが、現場責任者の評価につながるわけです。
しかし、こういった基本的なことができていない現場責任者は元請けの評価が低くなるので、現場サイドの要望を聞き入れてもらいづらくなります。何か要望を出すと、「その前に、やるべきことをしっかりやれ」ということになります。当たり前のことですが、このあたり前のことができない、分かっていない現場責任者も少なからずいるということです。
デキル現場責任者は基本的なことはしっかりしています。工事の品質を保つためなら遠慮せずに元請けに対してガンガンものを言います。しっかりした根拠と正当性があるなら、元請けは渋々でも予算を割きますし、工期期間の延期も了解せざるを得ません。こういったことが、本来の現場責任者の仕事であり役割なのです。

デキル現場責任者は職人に育てられる

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↑ベテラン職人は”おっかない”
大概の場合、工事現場にはおっかないベテラン職人がいるものです。何故おっかないか、それは彼らが誇りを持って仕事をしているからです。誇りあるベテランの職人は、若い現場責任者がいい加減な仕事をすれば立場に関係なく怒鳴りつけて叱ります。仕事とは何かを、若い社員に教えようとしているのです。
先程述べたように工事現場は危険の多い職場ですから、ちょっとした油断が命に関わる事故につながりかねません。それにいい加減な工事をすれば、後々大きな人災につながるリスクがあることも理解しています。それ故に、仕事に対して厳しくなるのです。
そしてデキル現場責任者は、そんなベテランの職人に敬意を払いつつ、時に意見を戦わせながら仕事を進めるます。現場で働く人たちと密度の濃いコミュニケーションをとり、信頼できる人間関係を構築していきます。
特に杭打ちはチームでする工事ですから、品質を維持するには信頼関係を前提にしたコミュニケーションが欠かせない要素なのです。その重要性を机の上での理屈ではなく、現場で教えてくれるのがベテランのおっかない職人さんなのです。そして、そのおっかない職人さんに認められて、はじめて一人前の現場責任者になるわけです。

手抜き工事は、現場責任者一人ではできない
誇りを持った職人達は、いい加減な仕事をする現場責任者を嫌います。ですので、遠慮無く現場責任者に対してものを言います。それでも是正されないようなら、その現場責任者のもとで仕事をすることを拒否するようになります。そして、そういう現場責任者を容認する会社は、取引先として敬遠されていきます。
その結果、その会社には慣れ合いで適当に手を抜いた仕事をする作業員が集まってくるわけです。そういった会社が生き残る術はただ一つ、安い金額で仕事を請け負うしかありません。請負金額が安いのは、元請けや一次下請けにとって魅力的です。もちろん、「安く請け負いますが品質は悪いですよ」、なんていう会社はありません。とりあえず、安さを売りにして仕事を確保できるわけです。
何より厄介なのが、杭打ちは土の中の工事ということ。上モノの工事のように結果が目に見えないという点です。なので、手抜きをしようと思えば簡単にできてしまうわけです。
ただ、ひと口に手抜きといっても、そのやり方は色々です。規定の手順を省いて要領良く作業を進めるのも、手抜きと言えなくはありません。問題は、その結果が後に重大な問題を引き起こす原因になるか否かです。
プロである以上、手を抜いた結果がどういう問題を引き起こすか想像できるはずです。そしてそれは、現場責任者だけが知ることではなく、現場で作業する「職人」にも分かることです。ですから、もし誇りを持って仕事をする職人がいれば、決して手抜き工事などさせません。したがって、杭打ちに携わるチーム全員が容認しなければ、手抜き工事はできないということになります。

予算や工期のプレッシャーがあるのは当たり前
この問題の背景として、工期や予算におけるプレッシャーが原因とする見方があります。しかしそういった捉え方は、問題の本質を見誤ることになりかねません。建設業界に限らず、計画と現実の誤差をどう埋めていくか、そのために最善の努力をするのが仕事の本質ではないでしょうか。
そもそも、計画した通りにことが進まないのは当たり前のこと。計画作成時に多少の修正や変更を想定して、ある程度の糊代を用意しておくのがプロというものではないでしょうか。
建築土木工事もそれは同じで、下請けと元請けの間でその糊代の使い方について協議をしながら工事を進めるのが本来の姿。ですので、下請け業者は工事の品質を保つために必要であれば、堂々と元請けに掛けあって予算や工期について交渉すべきです。正当な根拠があるなら、元請けも認めてくれるでしょう。もしそれを拒否して後に問題が発覚すれば、責任は全て元請け会社にあるのですから。

事なかれ主義が生むリスク

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↑ただ作業をこなすだけなら、ロボットでもできる
最も懸念すべきなのは、互いに何もしないこと。いわゆる、「事なかれ主義」です。下請けは元請けの顔色を気にしながら作業をし、問題があっても報告や相談をしようとはしない。元請けもマニュアル通りの書類を受け取るだけで、現場に任せきりであえて何も言わない。そうして、何事もなかったように工事が完了する。
もしそういった構図があるとするなら、誰も本来の仕事をしていないということになります。後になって何か問題が生じたとしても、誰に責任があるのか分からないし、誰も責任を取ろうとしない。そういう「事なかれ主義」的な体質が、今回のような問題を生む土壌になっているのではないでしょうか。面倒なことに関わりたくない、できるだけ責任を回避したい。そういった考え方が、結果として重大な問題に発展してしまう恐ろしさ。
そもそも、何一つ問題のない工事などあり得ません。現実の工事現場では、工事内容や作業工程をめぐって作業員現場責任者との間で色んな意見のぶつかり合いがあるのが当たり前。そこで発生した様々な問題を、現場責任者が自分の所属する工事会社との間で調整する。そして、必要に応じて元請けと交渉しながら工事を進めていくのが正常であり、本来の姿ではないでしょうか。
そして工事に携わる全ての人間の根底にあるべきものは、工事の品質を維持するという共通の目的と誇り。これは決して“きれい事”ではなく、厳しい環境下で仕事をするこの業界に欠かせない要素であるはずです。

終わりに
データの改ざん流用が日常的に行われているのではないか。そしてマンションだけではなく、日本中の建物の基礎に不安があるかのような風潮が広まっています。確かに一部の人間による、無責任極まりない工事の事実はあります。そしてデータの取り扱いが不適切に行われていたことも重大な問題です。しかし、杭打ちに携わる技術者や職人たちの多くは、誇りと責任をもって仕事をしています。
“品質の高い仕事をすることが、下請け業者の誇り。そして、仕事をくれる元請け会社の「顔」を潰すようなことは決してしないのが、元請けに対する答礼”これは土木業界40年のキャリアを持つ、大ベテランの言葉です。
https://kawlu.com/journal/2015/11/05/9235/

傾きマンション、杭施工記録に改ざんの跡 旭化成子会社
2015年10月15日03時09分

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杭の長さ不足イメージ
三井不動産グループが販売した横浜市都筑区の大型マンションで、杭の一部が強固な地盤(支持層)に届いておらず建物が傾斜した問題で、杭の施工記録が支持層に届いている杭のデータと差し替えられていたことが、横浜市などへの取材でわかった。この杭の施工を担当したのは旭化成建材。建築基準法に違反する疑いがあり、横浜市などは調査を始めた。

横浜のマンション傾く 強固な地盤、一部の杭届かず
問題のマンションは大型商業施設との一体開発の形で三井住友建設が施工し、三井不動産レジデンシャルが販売。2007年に完成し、最高12階建ての4棟に約700世帯が入る。
横浜市などによると、傾きが判明したのはこのうちの1棟。昨年11月、別の棟への渡り廊下の手すりがずれていることに住民が気づき、三井側が調べたところ、建物の片側の手すりが2・4センチ、床面が1・5センチ低くなっていた。この棟に52本ある杭のうち28本を調べると、6本が支持層に届いておらず、2本も打ち込みが不十分だとわかった。
さらに、三井側から今月になり、杭の施工記録が差し替えられていたと市に報告があったという。
このマンションでは杭を打ち込むための掘削時に支持層に到達したかを判定するため、ドリルの電流値を記録する方法がとられた。ところが三井側が施工記録を点検すると、複数の杭の数値が不自然に似通っていることが発覚。問題の棟の10本を含め3棟で計38本の杭の施工記録が、支持層に届いている別の杭のデータを転用して加筆したものだったという。
杭を施工したのは下請けの旭化成建材。現場は複雑な地質で、事前の地盤調査での想定に比べて支持層の一部が深いところにあった。支持層に到達していない杭は、この部分に集中していたという。
傾いた棟の安全性について三井側は市に対し、「震度7想定での検証を行ったが、倒壊の恐れはない」と報告しているという。三井側は4棟すべてについて調査し、第三者機関を入れて安全性を検証する。三井不動産レジデンシャルは「お住まいのお客様に対しては、当社として誠意を持って対応させて頂きます」、三井住友建設も「下請け業者が一部の杭の施工データを転用・加筆していた」としたうえで、「多大なご迷惑をおかけしておりますことを、心より深くおわび申し上げます」などとするコメントを発表した。
一方、旭化成は14日、データが差し替えられた杭工事を子会社の旭化成建材が請け負っていたと発表した。データの差し替えがどんな経緯で行われたのか分からないため、旭化成は調査委員会を立ち上げて調べるという。「ご信頼を損なう結果となりましたことを深く反省し、心よりおわび申し上げます」とし、問題の建物の補強・改修工事や他棟の調査費用を全額、旭化成建材が負担することにしたという。また、書類が残る過去10年間に旭化成建材が杭工事を行ったマンションや商業ビルについても、データの差し替えがなかったか調べる。
昨年には、別の業者が施工した横浜市西区のマンションでも杭が支持層に届いていない問題が発覚。市は建築基準法に違反しているとして、対策を取るよう販売者側に指導した。

■住民「裏切られた」
三井不動産レジデンシャルは9日から住民への説明会を続けている。
「このマンションは三井の目玉商品だったから購入した。裏切られたという一言に尽きる」。傾いた棟とは別の棟の部屋を3千万円台で購入した30代の男性は、そう憤った。
問題のある杭のすぐそばの部屋に住む女性(40)は、説明会に参加した夫(42)から、責任の所在について三井側からは「調査中」という回答だけだったと聞き、「何のための説明会なのか」と落胆した。「入居して7年ほどでコミュニティーもでき、転居は現実的に考えられない」。年内に三井側から今後の方針について回答があるといい、「今後どうなるのか」と戸惑った様子だった。

■国交省、三井側に調査を指示
国土交通省は横浜市から連絡を受けて今月6日、三井側に傾いた原因を調査して報告するよう指示した。
「住民生活への影響は大きく、あってはならないこと」と同省幹部。旭化成建材が元請けの三井住友建設に杭を打った現場を引き渡す際、なぜ正常を装ったデータを提出したかに、最も関心を寄せている。「故意なのか、故意ではないのか。組織的か、個人的かで今後の対応が大きく変わる」。仮に故意だった場合、調査は他のマンションに広がる可能性がある。
http://digital.asahi.com/articles/ASHBG4VXPHBGULOB014.html?rm=1279

November 16, 2015
杭打ちメーカーもデータ改ざんを助長

杭打ちデータ改ざん問題は建築業界のコスト最優先主義により生じている事は先に述べたとおりであるが、杭打ち同業他社においても同様の偽装が見られることからもそれが裏付けられた格好である。
問題の根源は、コスト最優先主義に有ることから、杭打ちデータ偽装は建築作業におけるほんの一握りであり、作業の各工程において、偽装改ざんが行われており、マスコミによって暴かれるのは時間の問題であろう。
資材発注ミスによる機能を満たさない材料の使用、工期短縮のための作業の中抜き、作業員の不正雇用などなど、業界で慣習とされている内容は多岐にわたり、その最終責任は発注企業にある。

業界慣習はそれに関わる全ての業種において黙認されてきており、杭打ちデータの偽装においては、杭打ち機械メーカーによる不作為(データが取得できていない状態でも作業できてしまう構造)も問題であったと云える。
杭打ち機メーカーには、データ未取得への対策を求めていたと考えられるが、メーカーはそれを無視している。
その結果として、データ取得のミスが発生し、作業員はそのデータを偽装せざる負えなくなってしまったと云えよう。
勿論、データ取得できなかったとして、管理者に申告することも有るだろうし、当初はそうしていたと思う。しかし、既に落ち込まれた杭を抜いて、再度作業を行う事は、多額の費用が掛かるとともに、工程に重大な影響を及ぼすこととなる。 その場合の責任を杭打ち作業会社に負わせるとなれば、それがデータ偽装の理由ともなりうる。
それほどまでに重要なデータ取得機能に問題が多発する製品を開発してきた、杭打ち機メーカーの責任は大きい。

人間はミスをするし、不正も行う。 それを人間の力で抑え込もうとするには限界がある。 機械が得意とするチェック機能は十分に生かされなければならない。 今後、再発防止のプロセスが討議される事と思うが、重要なデータに何があるのかを明確にし、そのデータの取得漏れが無いように、また作業段階で評価・判断できる体制を建築業界は持たなければならないだろう。
http://catshand.cocolog-nifty.com/catshand/2015/11/post-e5ee.html

November 03, 2015
杭打ち偽装事件は建築業界の闇に踏み込めるか?

杭が支持層まで届かない場合、正論では杭を再制作して打ち直し事になる。しかし、それをやっている建築元受、二次請け企業はどれだけいるのだろうか?
建築工事においてコストアップにつながる変更や対策への抵抗は非常に強く、杭の再制作と再工事などは工程管理上もっとも避けなければならない事案の一つだ。 当然に杭打ち作業で問題が発見された場合、正しい行動としては、現場監督にその旨を伝え、再工事を行う事になる。
しかし、実態はそうではない事が多々あることは建築業では常識である。
今回の杭打ち偽装問題は、そんな建設業界の常識的対応にノーを突きつけた事案であり、今後の建設工事における適正化につながると良いが、と思いたい。(多分、無理だろう)

建設業界のコスト意識(コストアップ時の責任)が下請けに押し付けられる体質に問題が有る。
個人の建設関連工事でも同じであるが、契約金額に対して、コストアップ分は発注者に請求するが、コスト削減分(不要な工事を行わなかった場合など)が、発注者に戻される事は殆ど無い。 ましてや公共工事の場合、コストアップ分を請求するには、その説明書類の作成だけでも相当になるため、元請業者は、下請け業者に対して費用を負担する事を強要する事になる。
分譲マンションの場合、工期延長などによるコストアップ分は、下請け業者への割り振りと併せて、住宅設備のレベルダウンや各種仕上仕様の変更などにより購入者に実質負担させることが多いようだ。(以前住んでいたマンションでは、設備仕様が大幅にダウンしている事が竣工図から明らかであった)
下請け業者へのコストアップ分の負担が常態化している業界に有って、営業成績を上げるにはどのようにするか? 自ずと答えは導き出されてくる。 それは、コストアップにならない様に問題を隠ぺいする事である。

では、下請け業者は常に隠ぺい改ざんを行っているのであろうか?(大多数の業者はやっているだろう)
住民に気づかれるようなへまをする業者はレベルが低いと評価されており、元請・二次請け業者からの仕事が減ることになるので、旨くやらなければならない。 また、工期延長が発注者の営業利益の棄損につながるような場合(例えばマンションの販売時期や公共施設の引渡日が遅れるなど)では、工期短縮するために営業から強い指示が有ることも多い。(引渡日は先延ばしできないという恐喝的要望)

元請が見て見ぬふりをしての、工期延長回避を下請けに求める事も多い。
自分たちは手を汚さずに、下請けに責任をなすりつける、業界のやり方である。(こんなことは、どの業界でも少なからずあるが) 

国交省は今回の事件を調査する中で、不正を(間接的にでも)指示した黒幕を暴いてほしい。その上で事件の背景を国民に知らせ、建築業界が如何にいい加減な倫理規範の中で仕事を回しているのかを暴くべきである。

また社会派と自称するジャーナリストは、原発問題や基地問題以上に、建築土木業界の闇に手を入れるべきである。(闇の奥に触れた途端に消されてしまう可能性が高いがチャレンジする勇気を求めたい)
http://catshand.cocolog-nifty.com/catshand/2015/11/post-17e4.html

October 24, 2015
建設工事データ偽装を見抜けない監理者に問題。

横浜のマンション建設時のデータ改ざんが問題となっており施工会社が糾弾されているが、建設工事には何段階ものチェック者が存在している事を忘れてはいけない。そしてその監理・管理・監督者の費用もまた建設工事に含まれており、工事に不具合が生じていた場合の責任は免れない。
耐震偽装事件の時も、偽装を見抜けなかった検査会社や役所の責任に追及が有った。
今回の事件は時系列的に見れば、耐震偽装事案の後であり、各管理者はその責任を認識していたはず。
偽装を行った施工者やその当時に虚偽データの存在を知り得た者に最大の責任は有るが、それを見抜けなかった管理者の責任もまた重いと云わざる負えない。

マイナンバーの交付が始まったが、問題を情報セキュリティーに置き換えて考えることもできる。
企業のマイナンバー保管システムから情報漏えいが生じた場合。 マイナンバー保有者(個人)は再発行するかどうか、再発行時には関連機関への届け出も個人で行わねばならず大変な手間となる。
外部からの不正アクセスによる漏洩の場合、その責任は誰に有るのだろうか?
不正アクセスされたシステムを構築した企業には有るだろう。またシステムの脆弱性を看過した導入担当者、運用管理を担う者にも責任は有るだろう。
情報システムは性善説による運用とは別に、性悪説による不正行為への対応も求められる。
建設工事においてもデータ偽装と云う性悪説に基づく行為への対応が求められてしかるべきであり、それは耐震偽装事件で既に顕在化し、対応が求められていた。 それを怠っていたとすれば、建設会社の無作為も責任の一端を負わねばならない。

建設業界は、仲間内で適当な仕事をする体質を変えない限り、これまでも、またこれからも、同じ事案は発生しつづけるだろう。
http://catshand.cocolog-nifty.com/catshand/2015/10/post-4d2d.html

旭化成建材のくい打ち 都内356件 知事「改ざんの有無、早急に」
2015年10月28日

横浜市のマンション傾斜問題で、舛添要一知事は二十七日、くい打ち工事を請け負っていた旭化成建材が都内で施工した三百五十六の物件リストを入手したことを明らかにし、「速やかにデータ改ざんの有無について報告を出すよう求める」と語った。都の友好都市のパリ、ロンドンに向けて出発前の羽田空港内で記者団の取材に答えた。
都によると、リストには物件名とくい打ちの施工年、元請け業者が書かれていたが、住所に番地がなかったり元請け業者が空欄だったりするという。この問題でくい打ちデータを改ざんした担当者による施工物件が、都内に二件あることが既に判明している。
リストにある物件の公表に関して、舛添知事は「都有施設は都の施工記録と照合し事実確認した上で、(安全性を含めて内訳を)速やかに公表したい」と説明。ただ、民間物件の場合には「プライバシーや資産価値が落ちるなどの問題がある」として、公表を慎重に検討する考えを示した。
舛添知事は来月二日までの日程でパリ、ロンドンを訪問。両市長との会談やバルス仏首相の表敬訪問のほか、ロンドンで開催中のラグビーワールドカップ(W杯)決勝を視察、国際パラリンピック委員会会長らとの面会も予定している。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201510/CK2015102802000171.html

くい打ち施工データ改ざん なぜ起きたか? (1)
2015/11/01

横浜市のマンション(マンション傾斜判明)のくい打ちを担当した旭化成建材の施工データ改ざんが問題になっています。その後の調査で、くい打ち施工データ改ざんは、全国に広がっていることが確認されつつある状況です。
同マンション1棟では、建物を支える基礎のくいが6本、固い地盤(支持層)に届いていませんでした。2本が支持層への差し込みが不十分でした。支持層が深さ14メートルにあると想定していたのに、傾斜判明後の地盤調査でおおむね深さ16メートルであったことがわかりました。つまり、2メートル短かった。
くいの長さは設計に先立つ調査をもとに三井住友建設(設計・施工 元請業者)が決めたといいます。下請けである旭化成建材だけでなく、元請業者の責任が真っ先に問われます。
くい工事での支持層の判断方法について、旭化成の記者会見資料では、
【1】ボーリング調査結果の確認(支持地盤の深さと土質)
【2】試験掘削による確認(ボーリング調査結果との照合)も項目にあげています。
設計段階における地質調査について、ある地質調査業者は「最近では予算カットによって、ボーリング箇所、本数、土質試験を減らす場合が多々ある。データが不足すると、支持層のアップダウンがあると推定しきれません。今回どうであったのか。よく調べる必要がある」といいます。
問題のマンションのくい工事が行われたのは2005年12月~2006年2月です。1級建築士によるマンションなどの耐震性を示す「構造計算書」の偽造が大問題になっていた時期と重なります。

建築業界では、設計でも【偽装】、施工でも【偽装】が行われていたことになります。
1998年の建築基準法改悪で、それまで自治体が行ってきた建築確認・検査を民間の「指定検査機関」も実施できるように「規制緩和」されました。データ改ざんなどの不正を防ぎ、安全を最優先する法制度、確認・検査体制のあり方が問われています。
http://saitamakensyoku.com/?p=1352

くい打ち施工データ改ざん なぜ起きたか? (2)
2015/11/02

問題が発生したときに必要なことは、現場の実態を直視し、原因を究明する。そして、再び同じ問題を繰り返さない改善策を実行することです。くい打ち現場で働く労働者の声を掲載した新聞記事を読んだので以下に抜粋します。
・・・・・
基礎を掘って鉄筋を入れ、生コンをうつ杭(くい)の基礎工事現場で31年間働いてきたある労働者の話です。
杭穴を掘削するオペレータは、元請けからボーリングの調査データをもらい、機械の前においてそれを見ながら掘る。急に硬くなったとか細かなデータを見ながら進める。支持層(固い地盤)に達したかどうかはボーリングデータを見て分かる。
だから元請けさんがつくるボーリングデータが重要になる。一つの現場で5カ所ぐらいのデータがないと、地震があったら怖いですよ。
今日、何メートル掘ったかは元請けに報告する。穴の深さを検尺して、径の大きさと深さを黒板に書いて写真を撮る。その1時間後、たまった砂層を取り除き生コンを入れる。
杭が6本も支持層に到達していなかったなんて「うそだろう」と思ったよ。工期をずらすとクレームがくる。でも中途半端な仕事をしたら自分にはね返る。何か他の理由があったのかもしれない。
杭の長さが足りなかったら「まわし杭」といってその横に2、3本の杭を補強しないと基礎にならない。ただ、「まわし杭」をすると、鉄筋も生コンも手間賃も全部基礎屋もちになりその分、赤字になる。元請けさんは知らん顔だから。
ごまかしは昔からあった。生コンの量を減らしたり、「工期がないから失敗してもわからないよ」と雨が降ったら生コンうってられねえよと1本抜いたり。データのごまかしも、ちょこちょこ直していた。

・・・・・
自然が相手なので、くい打ち現場の地盤の状況は、設計前の限られた地盤調査ポイントから外れた箇所では、推定と違っている場合がありえるのです。その場合、現場(下請けがほとんど)から元請けへ上がってくる地盤の状況報告を真摯に聞き、掘削深さの変更等の対応を【安全第一】・【信用第一】で実施するべきだし、するべきだった。そうできなかった、日本の建設業界の構造的問題があるように思います。この際、悪いうみを出し切ることが必要でしょう。
http://saitamakensyoku.com/?p=1354

くい打ち施工データ改ざん なぜ起きたか? (3)
2015/11/03

なぜこうした不正が見抜けなかったのか、欠陥住宅被害全国連絡協議会幹事長(弁護士):吉岡和弘さんへのインタビュー記事から抜粋します。
・・・・・
建物の安全を確保するためにそれをチェックする仕組みは3つありますが、いずれも機能しなかったことになります。
一つは、建築基準法に基づき行政または民間検査機関が行う審査には【建築確認】、【中間検査】、【完了検査】がありますが、【建築確認】は書面の審査ですし、【完了検査】は完成後のチェック、【中間検査】も杭の打設後になりますので、今回の問題では、ほとんどチェックが及びません。
2番目には建設業法26条で、建設工事の施工の技術上の管理を行う【監理技術者】を置かなければならないと規定されていますが、【監理技術者】による現場でのチェックがなされなかったことになります。
3番目に建築士法(2条、18条)で建築士は、建築物が法令または条例の定める基準に適合するよう【設計・監理】をしなければならない、とされています。とりわけ工事監理者が現場で目を光らせれば絶対に瑕疵(かし)は生じないはずです。ところが、今回の場合、施工主の三井住友建設を監理したのは三井住友建設1級建築事務所という同じ三井住友建設の社員たる建築士であり、本来、施工主から独立、自律して工事監理にあたるべき監理建築士「同じ穴のムジナ」となっていたわけです。
マンションの売り主で発注者である三井不動産レジデンシャルとマンションの区分所有者(持ち主)とは売買契約関係にあるので、建築後10年内であれば売り主の瑕疵担保責任が問われます。
また、施工者、1次、2次下請けと区分所有者とは、契約関係にありませんが、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵を作り出した過失があれば不法行為責任が問われ、連帯して責任を負うことになります。
さらに言えばこうした不正を見抜けないチェック体制を結果的に放置してきた国・行政の責任も極めて大きいと言わざるを得ません。
今回の事件の教訓として何が求められるか?

私たちは【インスペクター制度】を導入すべきだと提言しています。アメリカの制度ですが、日本語で言えば【建築検査官制度】です。建て主や施工主から完全に独立した検査官が安全検査を行うもので、アメリカでは市の職員と民間の検査員が市の代理人的立場で検査にあたっています。
建築確認制度の民間開放で行政の検査能力が弱体化していますが、その機能を強めることも大切といえます。国は当面、被害マンションの徹底した原因究明と居住者への支援を行うとともに、指摘した制度の欠陥を改正することが求められます。
http://saitamakensyoku.com/?p=1356

文責 釈迦牟尼仏(ミクルベ) 建太

次回に続く(杭データ改ざん事件151211

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