杭データ改ざん事件151217
Nov 7, 2015
何度も繰り返しになりますが、横浜の傾斜マンションの一番の問題点は、「なぜ支持層の起伏が激しい横浜なのに現場打ち杭ではなく既製杭で施工したのか?」です。
ぶっちゃけ世間で騒いでいるボーリング調査が間違ってた杭の長さを間違えた現場がデータを偽装した杭を打ったのが旭化成建材こんなの何も関係ないです。
どうせつまらないデータ改ざんなんてみんなやっているのです。でも大丈夫なのです。問題は、横浜でなせ既製杭?これのみです。
この点を問題視しているマスコミが全然ないなあと思っていたら、ありました。NHKの視点論点。
この視点論点では、
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場所打ち杭は、鉄筋とコンクリートで、現場で作る杭。
これならば支持地盤の深さに応じて臨機応変に対応することができる
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マンション建築の現場では、杭工事業者の強力な営業や、販売業者との特殊なつながりから、構造設計者の意向を無視して、最初から杭の種類や施工業者を指定されてしまうことが珍しくない。
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↓
おお・・・。さすがNHK。その通りだと思いますよ。
そして、この議論をも全否定してしまうパークスクウェア三ッ沢公園の件。この件も、何で誰もこの件にあわせて報道しないの?と思っていましたが、またまたちゃんとNHKが報道していました。
他のマスコミも、旭化成建材だ、マンションだ、じゃなくて、ちゃんと本来の問題点、本質をNHKのように報道してほしいです。旭化成建材のデータ偽装とマンションの安全性はほとんど関係ないのですから。
問題は、姉歯事件と同じですよ。設計ですよ、設計。
http://plaza.rakuten.co.jp/taguchan/diary/201511070000/
=多重下請・ピンハネ構造の下での「経費と時間の制約」を限りなく下請けに押し付ける今の建築業界の在り方を強制的に矯正しない限り、不正事件はまた起きる
2015年 12月 3日
<田中一郎>
みなさまご承知の通り、昨今、三井不動産が販売した横浜市の大型高層マンションで、巨大建築物を支える基礎工事中の基礎工事である「くい打ち」の偽装や工事データのすり替え不正が発覚し大問題となっています。マンションが傾いたり、耐震性に疑義が出たりして、表面化しました。不正工事を行っていたのは2次下請けの旭化成建材(元請は三井住友建設、1次下請は日立ハイテクノロジーズ)ですが、事件の内容や背景事情などを少し覗き込んでみますと、
2005年の姉歯・ヒューザー耐震偽装事件から約10年が経過し、日本の建築業界はあの10年前の事件を教訓として業界企業の隅々にまでその体質の抜本的改善を図り、二度とあのような一般の居住者・消費者・ユーザーを恐怖と不安に陥れない仕組みと体制の立て直しが求められていました。しかし、今回の再びの大事件発覚により(しかも広範囲)、その期待は根底から裏切られています。
私は建築業界や建築行政・都市計画行政については全くの門外漢ですが、以下、今回の「くい打ち偽装」事件について思うところ・気が付いたことを列記しておきます。この分野における専門家の方々には、下記に書きましたことをきちんと受け止めていただき、直ちにその抜本改革に着手していただくことにより、事態の改善をお願いしたいところです。また、これまでに申し上げてきた同じようなことをここでも繰り返したくはありませんが、こうした
http://blog.livedoor.jp/junyamaoka/archives/51614299.html
ポイントは次の3点です。
(一部抜粋)
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(3)旭化成建材、改ざん360件、61人関与、153件なお不明(東京 2015.11.25)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2643136.html
(4)くい打ち最大手も流用、三谷セキサン(毎日 2015.11.26 夕刊)
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6182135
<関連サイト>
(3)杭打ちデータ「不正流用」は日常茶飯事なのか 企業戦略 東洋経済オンライン 新世代リーダーのためのビジネスサイト
http://toyokeizai.net/articles/-/93382
(4)マンション杭打ち不正、鹿島施工でも地盤に届いていない可能性|データ・マックス NETIB-NEWS
http://www.data-max.co.jp/20151026_ymh_01/
(5)杭打ちデータ偽装、日本建築業界の「高品質神話」が崩壊―中国紙:レコードチャイナ
http://www.recordchina.co.jp/a121679.html
(6)くい打ちデータ改ざん ジャパンパイルでも18物件でデータ流用 FNN
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00308367.html
(7)<傾斜マンション>厳しい罰則ないと再発の恐れ マンション・住宅最前線 櫻井幸雄 毎日新聞「経済プレミア」
http://mainichi.jp/auth/logined_meter_over.php?url=http%3A%2F%2Fmainichi.jp%2Fpremier%2Fbusiness%2Fentry%2Findex.html%3Fid%3D20151102biz00m010052000c&usid=web
(8)◆マンション傾斜問題、新築「青田売り」の敬遠広がる(日本経済新聞)
分譲マンションの完成前に全戸を販売し終える「青田売り」は、日本独自のシステムだ。消費者には間取りなど設計を変更できる利点があるが、購入前に品質をチェックできないという問題が残る。杭のデータ改ざんで不信感を持った消費者が青田売りを敬遠。新築から中古への大転換が起き始めた。
http://mxt.nikkei.com/?4_41909_1201954_1
(田中一郎コメント)
以下、申し上げたいことを箇条書きにします。
市場原理主義というご都合主義が存在する。1999年の建築基準法改悪により、仕様基準の性能基準への転換や、建築確認検査機関の民間活用などが図られ、建築業者やゼネコンなどが出資し経営支配する民間会社が建築確認を行うようになった。これは明らかに利益相反行為そのものであり(雇われ監査法人が自身を雇った企業の会計監査を行うという利益相反行為、料金を支払って企業格付・社債格付をしてもらうというと利益相反と類似 ⇒ かならずロクでもないことが起きる)、中長期的な観点から正常に機能するとは思えない。
業界として構造的問題があることは理解するが、だからといって関係当事者に対して緩い罰則でいいはずがない。今回は2度目の大事件である、絶対に許されない。上記で申し上げたように、刑事、行政、民事の3つのレベルで厳罰に処すべきである(たとえば、民事=倍賞については「手付解約倍返し」に準じて、業者から被害者に建築物代金を払い戻す(事故建築物を買い戻させる)場合には、経過期間利息付きの「倍額返し」で行わさせるよう法制化するなど)。
(くい打ちや耐震性が偽装された建物でも、よく調べれば、それほど危険ではない、だから取り壊す必要はない、などという議論が一部の「専門家」から出ているが、それには賛同できない。明らかな「だまし」「虚偽」「偽装」の上の契約は無効であり、少なくとも「倍返しの買い戻し」くらいは補償されなければならない。取り壊すのはもったいない、などというのなら、全部を迷惑料付きで買い戻したのちに、マンション業者なり建築業者なりが判断すればいいだろう。そして、「こういう経過があった建築物です」と明確に表示・説明したうえで再び売り出せばいい。被害者に理屈で「安全ですから心配しないで」などと「押しつける」ことは許されない=他の事件では、建て替えさせる、あるいは買い戻させるのは大変な労力で、結局被害者が泣かされる場合が多い))
のではないか。今回を含めて不正や不祥事はこれらと直接関係がないように見えても、こうした業界としての様々な欠陥や矛盾の複合汚染の結果として表面化してきているのではないか。
(2)都市計画や建築基準法上の権限が、依然として政府(国土交通省・大臣)やその「出先」としての都道府県・知事に集中している。そしてその下で動く建築関係や都市計画関係、あるいは社会資本整備関係の審議会などは、業界利権関係者の巣窟のようになっている。現状の体制や人員では、建築業界や都市計画制度の適正化など、とてもとても実現しそうにない。彼ら有力土建業者の事業と利益と、それに結びつく政治家・官僚たちの利権優先となるのは火を見るよりも明らか(昨今はこれに御用学者やマスごみ、更には司法・裁判所までがジョインの状態)であって、地方分権や地方自治など夢のまた夢である。
(3)依然として「建てよ増やせよ」の成長至上主義・拡大優先主義=「小さく生んで大きく育てる」のダムやオリンピックの利権土建事業方式、景観も、風情も、居心地も、快適さも、居住の安全や安心も、コミュニティの尊重も、日照権も、およそ人間性のかけらも感じさせない「コンクリート至上主義」の業界文化(だからこそ、建築物の居住者・利用者の安全性など二の次となって、耐震性やくい打ち・基礎工事などが、工期とコストのつじつま合わせのために犠牲にされる)などがまかり通っている。
(4)行政の歪みや不作為を正すべき司法もまた、歪みや不作為を続けている、しかも、関係事件の判決内容は劣化するばかり ⇒ 裁判官たちを「弾劾裁判」(不当判決の責任追及)にかけるべき、でなければ、裁判官リコール制度を創設せよ
(5)賃貸マンションなどでは、施主が誰なのかはっきりせず、資金の出所が投資FUND(REITなど)であったり投資信託であったりする場合もある。住宅建築が単なる金儲けの手段として位置づけられ、それが住宅建築やマンション業の前面に出しゃばり始めている。住宅建設やマンション業に伴う「社会性」や「人間性」が「利益至上主義」の下でおざなりにされている。
(6)この建築業界の出鱈目な構造が、そのまま原発・原子力業界に持ち込まれ、今日ではそれが更にひどい状態で露出している。原発の場合には、設計もひどいけれども、施工もまた出鱈目の山であることが既に明らかになっている(例;平井憲夫さん)。もちろん、原子力規制委員会・規制庁の安全規制など、全く不十分でインチキの固まりであることも申し上げるまでもない。危険性は一般建築物の比ではない。
まもなく出現する人口激減社会に対応した「まちづくり」改革法案として、非常によくできたプランだと思います。ただ、それでもまだ、いくつかの問題はあるように思っていて、たとえば、まちづくりにおける建築業者・大資本=特に大手ゼネコンの資金力や政治力などをどうコントロールするのか、あるいは、地方各地にみられるボス支配の社会構造の中で、理想的な民主と自治の仕組み・制度はかえって危険な面があるのではないか、絶対的な最低限の規制のようなもの=建築物・構造物ナショナルミニマムのようなものが必要ではないか、完全自治へ向けて階段を上がっていくのはいいが、少しずつレベルアップしていくような斬新的なものの方が無難ではないか、等々です。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5785:151203〕
http://chikyuza.net/archives/58387
2015年11月 6日 (金)
完成検査をちゃんとやってそれ以後は元受けの責任(やりなおしはあっても)とそれば、製造物責任の所在が明確になるんだよ。「青田売り」は見直す時期。予約販売はいいと思うよ。ただし、これはあくまで予約。メーカーはそうやってるよ。
日本経済新聞
編集委員 木村恭子
消費者がマンションを購入する際には、こうしたデベロッパーが前面に出ていますが、実際にはいろいろな業者が建設に関わっています。今回の場合は、三井不動産レジデンシャルがデベロッパーとして販売を担当し、建設工事は三井住友建設が元請けとなり、日立ハイテクノロジーズが1次下請けとして工事の進捗状況などを管理。杭打ち工事は2次下請けの旭化成建材が担当しました。このように関係している業者が複数あるなかで、今回の問題の責任の所在を電子版読者にお聞きしたところ、「デベロッパー」との答えが62.5%を占めました。
「三井不動産レジデンシャルが一番の責任を負うべきだ。購入者は三井だから信用し、三井だから購入したのだ」(75歳、男性)マンション購入者が接触するのは販売会社ですから、その会社のブランド力が大きな購入動機になりえます。ピラミッド型の建設業界で頂点に立つ住宅販売会社の責任は重い――というわけです。「消費者が購入に際し下請け業者を指定したわけではなく、デベロッパーの責任で企画・開発(下請け業者選定、監督責任などを含む)された物件です」(58歳、男性)次に多かったのは「下請け会社」(24.2%)の責任を問う声です。
新築住宅に瑕疵(かし)があった場合に補修等を行った事業者に対して保険金が支払われる住宅瑕疵保険の検査員に従事されている読者(57歳、男性)からは次のようなコメントが寄せられました。「作業員が意図的にデータをねつ造したら、デベロッパーどころか、元請けの監督でも簡単には見抜けない。業者や作業員の良心に大きく依存する。下請け会社の社員の質が問題だと思う」データ改ざんに対する倫理的な責任を追及する声には、ほかにも「発注元のプレッシャーはつきもの。下請け会社の倫理観が重要」(28歳、男性)などがありました。この「下請けが受けるプレッシャー」に対しては、業界の構造的な問題への指摘がありました。「我が国の構造的な問題、意識から『利益確保』思考、『工期遵守』を下位に押し付けた結果ではあるが、手抜き、虚偽等を行ったのはいかん。『言えない』環境もあるのではないか」(58歳、男性)今回のケースに限らず、欠陥マンションが生じる不正の温床の一つとされるのが、工期に対して厳格なマンション業界に共通する体質です。
マンションは、売上高純利益率が5%程度の「薄利」といわれ、しかも、マンションが完成する前に売り始める「青田売り」が基本です。購入者はマンションの引き渡し日にあわせて引っ越し準備等を進めているだけに、仮に予定日までに工事が終わらなければ、クレームや解約騒ぎになりかねません。なるべく余計なコストをかけたくないデベロッパーは、完成時期を厳守することを最優先しています。2次下請けだった旭化成建材の親会社の旭化成の平居正仁副社長も10月20日の記者会見で、旭化成建材が杭打ちデータを改ざんした背景に「少しでも早くといった状況はあった」と述べ、工期厳守の圧力があったことを示唆しました。また、「その他」(8.0%)のコメントでは、元請け業者の三井住友建設の責任を挙げる声が多かったです。1級建築士で「ゼネコンに40年、ビル建築の現場技術者として働いた経験」を持つ読者(74歳、男性)からは「最終責任は元請けの三井住友建設です。杭の施工状況を最終的に、確認し記録をする事は、元請け社員が行うのが当然です」とありました。横浜の傾斜マンションでも、元請けの三井住友建設が作った図面に比べて長い杭が必要になったことも、問題の誘因となっています。責任の所在を明確にすべきことは大事ですが、ある読者(62歳、男性)からは「デベロッパー、下請け、プロジェクトに関わった全社の連帯責任」との認識のうえで、「間違っても個人の問題にしてはいけない」との指摘がありました。横浜市のマンション建設でデータを改ざんしていた旭化成建材は、この10年間で、全国で約3000件のマンションや商業施設などで工事を請け負っていたことから、横浜市だけでなく各地で不安が広がっています。 読者の中にも「こういう事件があると本当に大丈夫か?と心配になる」(49歳、女性)との声がありました。 そこで、皆さんがお住まいの家屋やマンション、アパートなどで、ご自分ではなく、工事上のミスから不都合を強いられた経験の有無をお聞きしたところ、「経験したことはない」が46.1%にのぼりました。
「実家は地元の工務店に建ててもらった。築30年以上、東日本大震災を含めて、震度5以上の地震を10回以上経験したが、外装も含めて無傷」(35歳、男性)もともとあるであろう日本の技術力の高さのあらわれかもしれません。他方、「複数のトラブルを抱えている人もおられるはずです」(64歳、男性)「すべての項目に被害甚大」(62歳、女性)など、多岐にわたるトラブル悩んでいる読者も多かったです。具体的な問題でもっとも多かったのが「雨漏り」(13.6%)でした。「施工不良で雨漏りが生じ天井から壁まで損壊した」(65歳、男性)また、「その他」(10.2%)では、「室内の空調の穴が開いてなかった。エアコンを付けられず後から穴を開けることになった」(30歳、女性)「引き渡し時に雨戸が入っていなかった」(65歳、男性)といった事例が寄せられました。
なお、10月29日の日本経済新聞朝刊「視点・焦点」面では、欠陥住宅問題について特集しています。併せてお読みください。
http://uvwwxy.cocolog-nifty.com/xyzuvw/2015/11/post-1979.html
2015/11/09 2015/11/09
横浜のマンション傾きから始まった、杭打ちデータ不正の問題がかなりの広がりを見せ、耐震偽装事件を彷彿させるようになってきました。
今回、事の発端となったのは旭化成建材には国交省の調査も入り、まだまだ収まる様子を見せません。
この問題は建設工事の品質に関わるものと言えます。しかし一連の報道を見ていると、これは安全管理においても同じなのではと思ってしまいます。
それというのは、これくらいならいいだろうと軽い気持ちでやってしまったことが、多大な被害を生むこともあるということです。
横浜のマンションのケースで言うと、杭が地盤まで達していないけれども、達したことにすることや、データがないから他から流用したことが、地盤沈下という形で帰ってきてしまったのです。
事故が起こる時も、これに似ています。
これくらいなら事故にならないだろうという安易な行動が、とんでもない事故を招いてしまうことがあります。
時間がなかった。
そんな大事になるとは思わなかった。
安易な妥協は、時として大きな災害を招きます。
妥協する所と、妥協してはならないことには、厳格な線引を必要とするのです。
ビルやマンションといった高層建築を作る上において、基礎工は最も大事です。建物全体を作る工事において、工期の半分は基礎工というくらい時間もかかります。
建物が沈まず、傾かないようにするためには、堅固な地盤で支えてやる必要があります。この堅固な地盤は地表からずっと深い場所にしかありません。杭は地下深くの地盤まで深く差し込み、地上の建物を支えるためのものです。いわば地中の柱といえます。
もし基礎なしで地面の上に建物を立てると、建物の重みで地面に沈みます。東京など海を埋め立てて造成した土地は、建物を支える力は貧弱で、いうなれば豆腐の上に中身の入ったコップを置くようなもの。試してみれば、どうなるかは想像のとおりです。
横浜のマンションでは、建物の一部が沈み込み、段差が生まれてしまいました。沈んだ所は杭が地盤に達していなかったところです。その数は8本だそうです。
数十本打ち込んだ杭のうちの、たった8本が地盤に達していなかったことにより、目に見えるほどの沈下を生み出したのでした。
施工担当者もまさかこんなことになるとは思わなかったはずです。
たった8本の不良によって、支払う代償はどれほどになるでしょうか。元請けの三井不動産レジデンシャルは建替えも提案しているそうです。補償や賠償などを含めると、とんでもない金額になるはずです。
施工業者の旭化成建材も莫大な支払いになるはず。費用はもとより、信用面でもかなりの損害は免れません。
工期が迫っていて、杭の取替が間に合わない状況だった。
現場作業が優先で、書類は後回しになっていた。
など、建設業に身を置くものとして、これらの言い分には身につまされます。
自分たちもたまたま大きな問題がないだけで、見に覚えがあります。
何とかつじつまを合わせようとしたものの、つじつまが合わなくなってしまったのです。
杭打ちの施工担当者が、まさかこんな問題になるとは夢にも思わなかったのではないでしょうか。
しかし過ぎ去ったことは、もう取り返しがつきません。
冒頭の繰り返しになりますが、事故もまさか起こるとはという時に降りかかります。
とはいえ、いつも事故なんて起こるはずがないと思っている人がほとんどでしょうけど。
ちょっと安全カバーを外してしまうこと、高所で身を乗り出していまうこと、重機の前を横切ってしまうこと。 全てほんの些細な行動にしか過ぎませんし、ほとんど事故に至りません。
しかし、何かタイミングが合ってしまった時、事故に巻き込まれてしまいます。
事故のほとんどは特殊な状況で起こったものではありません。日常的にありふれた作業で起こってしまうのです。
ほんの数本、地盤に達していないかもしれないけれども、大きな影響はないだろう・・・と、考えたかは分かりませんが、事故は安易な判断の結果起こってしまいます。
そして一連の杭打ち事件に似ているのは、安全管理も書類主義的な面もあることです。
チェックシートやKY、その他OSHASやISOに関係する書類など、かなりの記録を残すことが求められます。
書類をたくさん作っていると、安全管理をしっかり行っているように思ってしまいます。安全管理者が書類作成に忙殺されて、現場を見る時間がないなんてこともあります。
作業前の点検も、やってないけどチェック付けとけ、としていたら、ある日故障して事故になる可能性もあります。
体裁だけ整え、実が伴わないなんてことも、よくあることです。
マンションが完成してから、傾きが発覚しても、手の打ちようがありません。
事故も起こってしまったら、取り返しがつきません。事故調査で書類をチェックしたら、不正が見つかったなど、よくあるケースではないでしょうか。
安易に危険行動を許していないか。
書類の体裁を整えるだけの安全管理になっていないか。
杭打ち不正の問題ではありますが、その根はずっと深く、広いです。
安全管理についても、同様の問題を抱えています。
それにしても、今は何でも多大な書類を必要とします。書類ばかり増えると、実作業ができなくなる。
もうちょっと簡素化できないものでしょうか。
建築の法規がどのように変わっていくのかを知って欲しくて下記を掲載します。
2015/06/15 2015/06/23
足場、作業床というものは、高所作業では欠かせません。
街を歩いていても、ビルの外壁にピッタリとくっ付くように、足場が組まれているのを見かけるのではないでしょうか。
建物を作るに限りませんが、建設業の工事では足場は切っても切り離せません。
同時に、足場作業で、常につきまとう危険は、墜落・転落です。
高いところから落ちて、大怪我になったり、死亡したりする事故のことです。
墜落・転落事故は、労働死亡事故で、最も多い事故です。
平成25年度は、建設業全体で墜落・転落事故は、約6000件発生しています。
死亡者は、160人にもなります。 これは、建設業全体の死亡者の内約40%を占め、全産業においても約16%を占めています。
墜落・転落事故による死亡事故は、最も解決すべき課題と言えます。
墜落・転落による事故を、手を変え品を変え、防止してきました。
そのかいあって、事故は減り、死亡者も激減しています。
しかし、今なお建設業だけでも、毎年160人が死亡しているという事実。
これはただの人数ではなく、1人1人が名前を持ち、顔を持ち、家族を持ち、そして私たちと同じような日常を送っていたのです。
これが背景です。 とは言うものの、墜落事故の全てが、足場に関係するものではありません。
足場に関係する事故は、墜落・転落事故から、約16%(死亡者は約20%)を占めます。
足場以外の開口部などからの墜落・転落事故も多いのです。
しかし足場に関する死亡者も、平成25年度で31人もの人がいます。
決して少ないとは言えませんね。
事故が起こると、警察や労働基準監督署が調査します。
すると、事故には一定のパターンがあることがわかったのでした。
それは、法律で定められている、墜落防止対策がとられていなかったということです。
例えば、手すりがない、床が固定されていない、材料がやたらと貧弱だ、安全帯を使用していないなどです。
平成23年に大々的に足場の規則が変わったのですが、実施されていないというのが実状のようです。
どうして、やらないのか?
どうやら作業をする人の意識が低いんじゃないの、という推測が立てられました。
さらに、監督責任も不十分なんじゃないのというのも原因にありそうでした。
また割合としては少ないものの、きちんと法に則った設備を備えているのに、事故になったというのもあります。
足場の構造に不十分なことがあるのではと考えられたのでした。
1.作業者の安全意識が低い
2.監督責任が果たされていない
3.足場の構造に、まだ欠点がある
というのがあるようです。
これを踏まえ、平成27年7月より、足場に関する法改正が施工されます。
足場からの墜落防止対策を強化します
このページ下部にある、別添3がよくまとまっている思います。
1.足場作業者も特別教育を受ける。
2.足場の構造を、ちょっと変更する。
3.足場の組立・解体作業時はもっと安全な方法で行なう。
4.注文者の監督責任を強化する。
それぞれのポイントをまとめていきましょう。
それぞれのポイントをまとめていきましょう。
今まで足場に関する資格は、足場等組立解体作業主任者というものがありました。
これは5メートル以上の足場組立解体時に選任する作業主任者のための資格です。
実際に作業を行う人は、資格等は必要ありませんでした。
それが、法改正により、足場の組立・解体の作業を行う人も特別教育を修了しなければならないことになりました。
つまり、足場に関わる人は全員、特別教育を受けなければならなくなったのです。
これは足場屋、トビの会社にとっては、かなり痛いのではないでしょうか。 全社員が特別教育を受けなければならないわけですから。
多少の経過猶予があるのですが、数年以内に義務化されます。
この狙いは、足場作業を行う人が、適当な組立をしないよう安全意識を高めることです。
ただ実のところ、足場屋さんなどが組む足場のほうが、圧倒的にしっかりしていて、安全です。
危ないのは、そういう専門業者に依頼せず、自社で組み立てたりするところでしょう。
安全意識を高めるのであれば、専門外の作業者にこそ必要でしょう。
ところが、徹底されるかは事業者の意識任せになります。
構造の変更点その1 作業床
作業床について、ちょっと変更があります。
今までの作業床の規定は、幅が40センチ以上、床材と床材の間は3センチ以下とするでした。
今後は、これを活かしたまま、床材と支柱部分との隙間も制限しようというようになります。
支柱の部分を建地といいますが、床材の端と建地の隙間は、12センチ未満としなければなりません。
こんな感じです。↓
床の端から、墜落するという事故があったから、対応になったんですね。
構造の変更点その2 墜落防止装置の取り外しについて
次に、手すり等の墜落防止についての規定が強化されます。
今までは、手すりなどはどうしても付けられない場合は、安全帯を着用する設備を設けるなどすれば、設けなくても構いませんでした。
また同じように条件を満たした場合で、作業の性質上必要な場合は、手すりを取り外すことができました。
しかし、今後は条件がかなり厳しくなります。
まず、手すりが取り外されている場所へは、関係者以外を立入禁止としなければなりません。 また作業の必要があって手すりを外した場合は、作業完了後直ちに復旧しなければなりません。
墜落防止設備が外される状態を最小限にすること、そもそも人を近づけないことなどが義務化されます。
ちなみに、これは足場だけでなく、作業構台や仮設通路など、手すりを必要とする場所では同じく必要です。
構造の変更点その3 鋼管足場の構造について
これは強化というより、緩和です。
今までは、地上から31メートルを越える単管足場は、鋼管を2本組の支柱で支えなければなりませんでした。
法改正により、設計荷重が最大使用荷重を超えないときは、2本組でなくともよいとなりました。
作業手間は多少減るかもしれませんが、設計荷重の計算など、事前の準備が重要になります。
実は、足場の事故で多いのは、組み上がった後の作業中ではなく、組立や解体の時です。
何もないところに足場を組むわけです。 足場の足場はありません。とても不安定な場所での作業が余儀なくされるのです。
当然、安全対策はとられています。 不安定な足元を解消すべく、簡易の作業床を設けたり、安全帯を使用します。
安全帯も、足場が組み上がっていれば、手すりが使えますが、手すりのない状態では親綱などを張って、対応します。
足場組立解体時の事故を減らすために、作業時の設備をより安全に仕向けていくよう、法改正されます。
今まであれば、高さが5メートル以上の足場を組み立てたり、解体したりする時に墜落防止措置が義務付けられていました。
法改正では、高さが2メートル以上までに引き下げられます。
2メートルといえば、成人男性のちょっと上くらいです。
今までは2層目以上の場合だったのが、今後は1層目でも作業床を置く場合は、墜落防止措置をとることになります。
また足場材を組んで、緊結する作業の時の設備が、強化されます。
今までは、作業床材として20センチ以上の板を敷いて作業すればよかったのですが、今後は40センチ以上の幅の板を敷かなければなりません。1枚板である必要はなく、20センチの板を2枚並べたりしても、大丈夫です。
今までよりも足元の不安定さが解消されますね。
また、yはり安全帯は着けなければなりません。
安全帯を取り付ける手すりや親綱などが、義務化されるようになります。
足場組立作業で、手すり先行工法というものがありますが、安全帯着用設備ということで、暗に推奨しているようです。
手すり先行工法の解説はこちら。
足場組み立て時にもご注意を。手すり先行工法。
今までよりも、組立解体作業時の安全対策を強化しています。
注文者とは、仕事を下請け業者に注文する事業者のことです。
ただ仕事を注文した、後はお任せというわけにはいきません。
注文者には注文した人の責任があります。
その1つが、足場が安全かどうかをチェックを行なうことです。
注文者が講ずべき措置2
今までであれば、点検する時期は、決まっていました。
大雨などの悪天候の後、もしくは震度4以上の地震の後です。 足場の構造を揺るがす出来事があった場合、作業前に点検しなければなりませんでした。
今後は、点検時期が増えます。 悪天候、地震の後に加え、足場などを一部解体、または変更の後にも点検しなければなりません。
構造を変えた時も点検しなければならなくなりました。
もし、異常があった場合は、作業させず、直ちに補修することとも義務に含まれます。
法律が改正されると、大体においてやることが増えます。
足場屋さんが所有する材料は、規格をクリアしているものも多く、改めて買い直すことは少ないでしょう。
大変なのは、特別教育ではないでしょうか。
新たに出来たカリキュラムなので、作業者全員が、教育を受けなけばなりません。 時間とコストが馬鹿になりません。
ある程度は、猶予期間があり、補助金等もあるでしょうが、それでも大変なことには変わりません。
足場の事故の原因の多くは、そもそも手すりなどの墜落防止対策をしてない所で起こっています。
構造を強化した所で、元から設備を作る気がない人たちには、関係がありません。
いかに、墜落防止対策を備えさせるか。
一番重要なことは、そういった点でしょう。
解決策は、トップダウンで徹底させること。
自発性などを待っていては、何時まで経っても変わりません。
まずはやらせること。
労働基準監督署、元請業者、注文者、事業者、作業監督などの役割が重要です。
ただし、何故やらなければならないのか、理由も伝えましょう。
法改正したからでは、やる気など起きようはずがありません。
落ちたら死ぬということを、口を酸っぱくして伝えるのも大切です。
この記事の冒頭で書いたものの、去年墜落で死んだのは160人だぞと言っても伝わらないので注意です。 そのような数字は他人事の世界です。 リアリティがありません。
作業者自身が死ぬかもしれないこと、大怪我になるかもしれないこと。 この点を重視し、伝えるのも、安全教育として重要な事ですね。
*******
今回は、法改正部分だけを書きましたが、条文の修正については、それぞれ解説した記事で補足してきます。
すぐじゃないですけど、そのうちやります。
↑ 各条文修正しました。
安全衛生教育と有資格作業について1 「特別教育」
改正対象は、第36条、第39条です。
通路と足場 その3。軌道や架設など特殊な場所の通路。
改正対象は、第552条です。
通路と足場 その5。 足場の材料
改正対象は、第560条 第563条です。
通路と足場 その6。足場の組立解体と点検
改正対象は、第567条です。
通路と足場 その7。 丸太足場と鋼管足場のきまり
改正対象は、第570条です。
通路と足場 その9。 作業構台の注意
改正対象は、第575条の6です。
注文者が講ずべき措置2
改正対象は、第655条、第655条の2です。
なお、「中さん」→「中桟」といった修正もあるのですが、これはしれっと直していますので、改正対象には含めておりません。
次回に続く(杭データ改ざん事件151217-2)