杭データ改ざん事件161010

杭データ改ざん事件161010 旭化成建材中間報告全文中(4~19頁まで/55頁)

第 1 章 当委員会の概要
Ⅰ 当委員会の設置経緯及び目的
旭化成は、横浜市都筑区の共同住宅(以下「本件マンション」という。)のD 棟とそれに隣接する B1 棟との渡り廊下手すりのエキスパンション部に段差が生じ、D棟側が約2センチメートル低くなっていること(以下「本件段差」という。)が発覚したことをきっかけに、子会社である旭化成建材株式会社(以下「旭化成建材」という。)が本件マンションにおいて施工した杭工事(以下「本件杭工事1 」という。)に施工不良が存在する可能性があること、並びに本件杭工事に関する2006 年(平成 18 年)4 月付け施工報告書(以下「本件施工報告書」という。)に添付された、電流計データ2及び流量計データ3(以下、電流計データ及び流量計データを併せて単に「データ」ということもある。)について、データ流用、切り貼り又は人為的加筆による改ざん(以下、まとめて単に「流用」ということもある。)が行われた可能性があることを覚知した(以下「本件データ流用」という。)。以上の情報は、本件マンションの元請業者である三井住友建設株式会社(以下「SMC」という。)からもたらされたものである。なお、本件マンションの建築主は、三井不動産レジデンシャル株式会社(以下「三井不動産レジ」という。)、設計者及び元請業者は、SMC、本件マンションのうち、杭工事のみに関して、SMCの下請負人となったのは、株式会社日立ハイテクノロジーズ(以下「日立ハイテク」という。)であり、旭化成建材は、本件マンションの杭工事に関して、日立ハイテクの下請負人になった者である。旭化成建材は、実際の杭工事を、a社及びb社に下請負させて施工した。

そこで、旭化成は、本件杭工事に関して、①事実関係の調査(本件施工報告書に添付されたデータの調査を含む。)、②本件杭工事により施工されたの安全性調査、③原因の究明、及び④今後の再発防止策に関する検討に取り組むことを目的として、2015 年(平成 27 年)10月14日に、代表取締役副社長執行役員の平居正仁を委員長とする調査委員会(以下「社内調査委員会」という。)を設置した。
さらに、旭化成は、本件杭工事に関して、①社内調査委員会が実施する調査結果の検証、②事実関係の調査(本件施工報告書に添付されたデータの調査を含む。)、③原因の分析、④再発防止策の提言、及び⑤旭化成建材が施工した過去10年間の杭工事施工実績の調査方法等に関する指導及び助言に取り組むことを目的として、2015年(平成27年)10月22日に、当委員会を設置した。
ところで、本件マンションは、A-1 棟、A-2 棟、B-1 棟、B-2 棟、B-3 棟、C-1 棟、C-2 棟 及び D 棟の計8棟からなる共同住宅である。本件マンションの敷地内には、これら8棟の共同住宅のほかに、共用棟、保育所その他の付属棟(以下「付属棟」という。)が存在するが、当委員会の設置の目的は、もっぱら、ダイナウィング工法(以下「DW 工法」という。) 4 が用いられた上記8棟の杭工事に関する調査を実施することにある5。なお、現時点においては、旭化成建材が施工した本件マンション以外の杭工事においてもデータ流用の事実が判明しているため、当委員会では、原因の分析及び再発防止策の提言にあたっては、本件マンションに留まらず事実関係の調査を行う必要があると考えている。
本中間報告書では、原則として、先行して調査を行ってきた本件杭工事に限定した範囲で、これまで行った調査の概要、原因分析及び再発防止策の概要について報告することとする。

Ⅱ 当委員会の構成
当委員会は、下記の3名で構成されている。
委員長:弁護士 鈴木 和宏
委員 :弁護士 大森 一志
委員 :弁護士 沖田 美恵子
なお、当委員会の各委員は、これまで旭化成及び旭化成建材と業務上の契約関係等利害関係はない。

Ⅲ 当委員会による調査方法・内容
1 関係資料の精査 本調査では、旭化成建材に現存する本件杭工事に関する契約書類、本件施工報告書その他工事関係書類等の精査・検証を実施した。
また、社内調査委員会は、合計50名(一部の対象者については複数回)の関係者に対してヒアリングを実施したところ、当委員会では、そのヒアリング結果についても精査・検証を実施した。

2 ヒアリングの実施
本調査では、本件杭工事の事実関係、背景事情等を明らかにするために、本件杭工事に関与した者等11名に対して(一部の対象者については複数回)、ヒアリングを実施した。
また、建築物の杭工事に関する専門的知見を得るために、外部専門家4名に対してもヒアリングを実施した。
ヒアリング実施済みの対象者は下記の表のとおりである。
事実調査に関するヒアリングの対象者
氏名 本件杭工事施工当時の役職名等
A氏c社社員兼旭化成建材出向社員
本件杭工事の2号機現場責任者B氏b社社員
本件杭工事の2号機のオペレーターC氏a社社員兼旭化成建材出向社員
本件杭工事の1号機現場責任者D氏a社社員
本件杭工事の1号機のオペレーターE氏a社社員
本件杭工事の補助要員F氏旭化成建材-基礎事業部パイル営業部工事グループ
本件杭工事の補助要員G氏a社社員-本件施工報告書を作成した事務員
小林 宏史 旭化成建材取締役兼常務執行役員 (以下「小林氏」という。) 6
前田 富弘 (現在)旭化成建材代表取締役社長 (以下「前田氏」という。) 7
H 氏 旭化成建材 基礎事業部パイル営業部部長 本件杭工事の担当部署管理職
I 氏 旭化成建材 基礎事業部パイル営業部工事グループ
本件杭工事の主任技術者
なお、本件杭工事関与者のうち、SMC に対する営業活動の責任者であったJ氏8については、故人のため、ヒアリングは不可能であった。

建築物の杭工事の専門的知見に関するヒアリングの対象者
氏名 役職名(ヒアリング当時のもの)
K氏d社顧問
L氏e社役員
M氏f法人理事
N氏g大学教授

Ⅳ 本調査の基準日
本調査は、2015 年(平成 27 年)10 月 22 日に開始された。
本調査の中間報告のための基 準日(以下「基準日」という。)は、2016年(平成 28 年)1月7日であり、基準日までに17回の調査委員会を実施した。したがって、下記第2章~第6章は、基準日までに判明した事実関係、検証結果等をまとめたものである。

Ⅴ 本中間報告書の概要
上記Ⅰ記載のとおり、本件杭工事には施工不良が存在する可能性があり、また、本件施工報告書に添付されたデータには流用されたデータが存在したところ、当委員会は、これらの事実関係について調査を行い、それに基づいた原因分析、再発防止策の提言等を行うために設置されたものである。しかしながら、下記第 3 章Ⅱで詳論するとおり、当委員会としては、基準日時点において、本件杭工事における施工不良の有無を確定するには至っていないと考えている。他方、下記第3章Ⅲで詳論するとおり、本件施工報告書に添付された電流計データ及び流量計データの中に、データ流用が存在することは当委員会としても確認したところである。
そこで、本中間報告書においては、主に、事実関係の確認が先行している本件施工報告書におけるデータ流用について述べることとし、原因分析及び再発防止策についても本件施工報告書におけるデータ流用を中心に、関係する事項について述べる。
以下、本中間報告書において、第2章で「本調査の前提事項」として杭工事に関する一般的な事項及び DW工法に関する事項について、第3章で「本件杭工事に関して当委員会が認定した事実」として本件杭工事に関する施工状況、施工不良の有無、データ流用等について、第4章で「データ流用の原因背景分析」について、第5章で「再発防止策の提言」について、第6章で基準日時点での総括について、それぞれ述べるものとする。

第2章 本調査の前提事項9
Ⅰ 本件データ流用の概要並びに旭化成及び旭化成建材について
1 本件データ流用の概要
本件データ流用は、本件杭工事において、c 社から旭化成建材に出向していたA氏が、特定のについて、電流計データ及び流量計データの取得漏れや紛失等が発生した際に、正常に取得・保管等されていた他の電流計データ及び流量計データをコピー、切断、貼り付け等する方法でデータ流用を行うことにより、A氏が担当した全てのについて、あたかも完璧にデータが揃っているかのように装ったものである。

2 旭化成及び旭化成建材について
旭化成は、2003 年(平成 15 年)10月に持株会社制を採用することを決め、7社の事業会 社10を擁する経営体制に移行した。旭化成は、その後もグループ内で組織再編を進め、現在では、ケミカル・繊維事業領域、住宅・建材事業領域、エレクトロニクス事業領域、医薬・医療事業領域4分野に合計9社の中核となる事業会社を有し、持株会社としてこれら9社の株式を100%保有している(以下これらの会社及びその子会社を併せて「旭化成グループ」という。)。
旭化成建材は、旭化成の建材事業のうち主として販売・施工を担う会社として1976年 (昭和51年)9月に設立されたところ、旭化成が2003年(平成 15年)10月に持株会社制へ移行した際に、旭化成の建材事業のうち、建材の製造・研究等の機能をも承継したものである。旭化成建材のコア事業は、ALC(軽量気泡コンクリート)、基礎、断熱材及び構造資材の4分野における製品と施工技術の提供であり、基礎事業の中に、本件で問題となったパイル事業(杭打ち事業)が含まれている。なお、基準日時点で旭化成建材が展開しているパイル事業は、主としてEAZET(鋼管杭回転埋設無残土工法)、ATT コラム(ソイルセメント併用羽根付鋼管杭回転埋込工法)等の鋼管杭を使った比較的小規模な杭に関する事業である。本件杭工事で採用されたDW工法は、2004 年(平成 16 年)に大臣認定11を取得して、その事業が開始されたものの、基準日時点において、北海道を除き、旭化成建材はこれを取り扱っていない。
旭化成建材では、本件杭工事施工当時、基礎事業部及びパイル営業部が、杭工事の営業及び施工を担当しており、パイル営業部・営業グループが杭工事の営業及び販売、パイル営業部・工事グループが杭工事の施工を担当していた。これらの担当部署に加え、基礎事業部・基礎技術部や施工技術部もパイル事業(打ち事業)に関与することがあった。具体的には、基礎技術部は、杭工事の工法に関する大臣認定の取得、杭種や仕様に関する検討等の杭工事に関する技術的判断を担当し、施工技術部は、工事の支援、使用機材の仕様の検討、工事の安全管理の検討などを担当していた。

杭工事一般について
1 杭工事に関する建築基準法上の規制
(1)杭工事の目的
建築物の杭工事の目的は、建築物の基礎が、建築物に作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝え、かつ、地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものになるようにすることである。
(2)の許容支持力
構造耐力とは、建築物が、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃による垂直方向及び水平方向の外力に対抗して構造上の安全性を維持することのできる能力をいう。建築基準法は、建築物の構造耐力に関して、建築物の高さを踏まえた分類に応じて、建築物が適合すべき基準を定めている。具体的には、建築物の構造方法が政令で定める技術的基準に適合するものであること、及びその構造方法が政令で定める基準に従った構造計算によって安全性が確かめられるものであることが要求されている。
建築物の基礎にを使用する場合において、建築基準法施行令の定める構造計算を行うにあたっては、基礎杭の許容支持力12の値を定めることが必要になる。建築基準法施行令93 条は、基礎杭の許容支持力は、国土交通大臣が定める方法によって、地盤調査を行い、その結果に基づいて定めなければならないと定めている。建築基準法施行令93条を受けて、平成13年国土交通省告示第1113号(以下「告示1113号」という。)は、①地盤の調査方法及び②基礎杭の許容支持力を定める方法について定めている。告示1113号第5は、特定の基礎について、基礎の許容支持力を、既定の支持力係数に基づいて算出される杭先端支持力及び周囲の摩擦力から求めることとしている。一方、告示1113号第6は、告示1113号第5の基礎杭とは異なり、支持力係数が未知である基礎について、必要な載荷試験13等を行うことで支持力係数を決定し、これに基づいて、告示1113号第5が対象とする基礎と同様に、杭先端支持力及び周囲の摩擦力から許容支持力を設定することができるとしている。
本件杭工事では、一般的な基礎と比べ、高い許容支持力を有する(以下「高支持力杭」 という。)が用いられた。この高支持力杭は、告示1113号第5の対象ではないが、告示1113 号第6により、必要な載荷試験を実施して、告示1113号第5の規定値よりも高い支持力係数を得たため、一般的な基礎よりも高い許容支持力を有するものとして設計することが可能となった杭である14。

(3)建築主事による建築確認
建築物に関する請負契約の注文者(以下「建築主」といい、本件では三井不動産レジがこれに該当する。)は、建築物を建築しようとする場合においては、工事に着工する前に、その計画が建築基準法等に適合するものであることについて、建築主事確認(以下「建築確認」という。)を受けなければならない。
一般に、建築主は、建築物の設計を行う者(以下「設計者」といい、本件ではSMCがこれに該当する。)に対し、建築確認に関わる業務を委託し、設計者は、建築主の代理者及び設計業務の受託者として、建築確認に関して建築主が果たすべき義務を履行していることが多い15。
設計者は、建築確認の申請をする際、建築基準法施行規則1条の3第1項の定める書面 (以下「建築確認の申請書類」という。)を提出する必要がある。建築確認の申請書類のうち、杭工事に関係する書類としては、杭伏図16や、基礎・地盤説明書17等が挙げられる。基礎・地盤説明書には、告示1113号第6に従って実施した載荷試験の結果を明示することが求められるのが原則である。

2 杭工事の施工までの流れ18
杭工事を含む建築物全体について建築主と請負契約を結んだ元請負人(以下「工事施工者」 といい、本件ではSMCがこれに該当する。)が、杭工事を施工するまでの流れは、上記1記載の建築基準法の各規定に従うと、概要は、下記①~⑦のとおりとなる。なお、杭工事の施工業者(以下「杭工事業者」といい、本件では旭化成建材がこれに該当する。)は、販促・営業のために、各杭工事業者が保有する工法を、下記②の過程で設計者又は工事施工者に説明、 提案することがあり、その結果、杭工事に用いる工法と併せて、杭工事業者が決まることもある。したがって、事案によっては、杭工事業者の選定は、下記①~⑦の早い段階から開始されていることもある。
地盤調査(支持層19の位置の確認を含む。)
② 基礎の設計(工法の種別、の種別、の寸法等の決定を含む。)
建築確認の申請書類(杭伏図、基礎・地盤説明書等を含む。)の作成
建築確認の申請
建築確認の取得
杭工事業者の選定
杭工事の施工
本件杭工事では、SMCは、設計者の立場で上記①~⑤までのプロセスを第一次的に受託するとともに、工事施工者の立場で上記⑥及び⑦の業務を請け負った。旭化成建材は、上記⑥のプロセスにおいて、日立ハイテクを介して、本件杭工事を請け負うとともに、実際に杭工事を施工したa社及びb社に本件杭工事を下請負させた。

Ⅲ DW 工法の施工管理体制に関する本件杭工事施工当時の規制等
1 建築基準法及び建築士法(設計者及び工事監理者について)
建築士法では、建築物の構造設計工事監理等は、建築士が行わなければならないとされている。また、建築主が、建築物を建設する際には、建築士法が定める建築物の種別に応じて、建築士である工事監理者を定めなければならない。ここで工事監理とは、「工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認する」 ことをいう。また、建築士法18条4項では、建築士は、「工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に注意を与え、工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない」と規定されている。
以上より、建築物を建設する際、建築主は、建築士に対し、設計及び工事監理を依頼することとなるが、本件マンションの場合、本件マンションの建設を受注したSMC内の部署である一級建築士事務所が、設計及び工事監理を担当したものと思われる。
2 建設業法(主任技術者及び監理技術者について)
建設業者は、元請業者から下位の下請業者に至るまでの全ての階層(本件では、SMC、日立ハイテク、旭化成建材、a社及びb社)において、請け負った建設工事を施工するときは、原則として、工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる者(以下 「主任技術者」という。)を置かなければならない。主任技術者は、工事現場における建設工事を適正に実施するため、建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理及び建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督の職務を誠実に行わなければならない。
また、発注者から直接工事を請け負った元請負人は、その工事について結んだ下請契約の請負代金の総額が3000万円以上(建築一式は 4500 万円以上)の場合、その工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる者として、主任技術者に代えて、監理技術者を置かなければならないとされている20。
さらに、公共性のある工作物に関する重要な工事で政令で定めるもの21(以下「公共性の ある重要な建設工事」という。)については、監理技術者又は主任技術者は、工事現場ごとに専任の者でなければならない。「工事現場ごとに専任」とは、2 箇所以上の建設工事を兼任できないという意味である。具体的には、他の工事現場の職務を兼務せず、常時継続的にその工事現場の職務にのみ従事していることをいい、工事現場に常駐することを意味するものではない。
本件杭工事では、元請業者であるSMCは監理技術者を、下請業者である旭化成建材等は 主任技術者を、それぞれ設置する必要があり、また、本件マンションのような共同住宅に関する建設工事は「公共性のある重要な工事」に該当するため、監理技術者及び主任技術者は、本件杭工事について専任の者でなければならない。

3 DW 工法施工指針(現場責任者(現場代理人)について)
旭化成建材は、DW工法について、下記Ⅳにて説明する国土交通大臣による認定を受けた 際、その認定書(以下「DW工法認定書」という。)の中で施工指針(以下「DW工法施工指針」という。)を定めている。DW工法施工指針には、DW工法の施工手順、施工計画、施工管理組織等の基本的な事項が定められており、その中でも、DW工法の施工管理組織については、 DW工法の施工全般を管理する現場責任者を設置すること、及び現場責任者の下に各工種の施工人員22を置くことなどとされている。DW工法施工指針における「現場責任者」は、本件杭工事では「現場代理人」と呼ばれることもあったが23、本中間報告書では「現場責任者」と呼ぶこととする。
現場責任者は、工事全体を把握し、工事の遂行及び安全管理の徹底を図らなければならないとされている。また、DW工法施工指針上、現場責任者の業務には、杭工事の際に電流計データ及び流量計データを記録することも含まれていたと解される。

工法の大臣認定制度について
1 概要
建築基準法は、「構造方法等の認定24」を取得しようとする者が、特定の工法について、あらかじめ国土交通大臣認定(以下「大臣認定」という。)を受けた場合、安全性を担保する目的で実施される載荷試験を省略することができる制度を定めている。なお、DW工法については、旭化成建材が規定された申請を行い、大臣認定を取得している。
工法の大臣認定を取得するための審査に必要な性能評価(以下「性能評価」という。) は、建築基準法77条の 56 が定める指定性能評価機関(以下「指定性能評価機関」という。) 25が行う。指定性能評価機関から性能評価を取得した者は、指定性能評価機関が交付した性能評価書その他所定の書類を国土交通大臣に提出することにより、大臣認定を申請することができる。
大臣認定の対象には、①性能評価を取得した事項(地盤の許容支持力、適用する地盤の種類、基礎の構造方法、工事施工者等) 26、②杭工法の概要、及び③工法の施工指針が含まれる。工法の施工指針は、適用範囲、事前調査、施工計画、使用材料(使用するの種類・標準寸法を含む。)、施工手順、施工管理方法等を定めるものである27。
国土交通大臣は、工法について大臣認定をする場合には、大臣認定の申請をした者に対し、認定書(以下「認定書」という。)を交付する。認定書には、上記①~③を記載した書面が、別添として添付される。
大臣認定を受けた工法(以下「認定工法」という。)は、認定書の別添で指定されている工事施工者(以下「指定工事施工者」という。)のみが、施工することができる28。そして、指定工事施工者は、認定工法を施工する場合、認定書に添付された施工指針の定めに従って施工することが求められる。
なお、建築主建築主から依頼を受けた設計者(以下「建築主等」という。)が、高支持力杭の施工方法として、認定工法を採用すると、建築確認の申請書類のうち、告示1113号第6の定めに従って実施した載荷試験の結果その他の所定の書類の提出を省略することができる。
2 大臣認定を取得していない杭工法の扱い
建築主等は、高支持力杭を施工する場合、大臣認定を取得していない工法(以下「認定外工法」という。)を採用することも可能である。
もっとも、認定外工法を採用する場合には、建築主等は、上記1記載のメリットを享受することができない。すなわち、建築主等は、認定外工法を採用する場合には、告示1113号第6の定めに従った載荷試験を現地で実施した上で、後日、建築確認を申請する際に、その載荷試験の結果その他の所定の書類を、申請書に添付して提出しなければならない。
杭工事に関する認定工法を、認定書別添書面で指定されているの先端部の地盤(以下 「認定地盤」という。)以外の地盤(以下「認定外地盤」という。)において施工する場合には、認定外工法に該当することになる。杭工事業者が認定外地盤において認定工法を施工する場合には、建築主等が載荷試験を実施した上で、認定地盤における施工と同様に、認定書に添付された施工指針の定めに従って施工することが求められるものと考えられる。

以下注釈
1 本中間報告書でいう本件杭工事には、以下に述べる付属棟の杭工事を含まない。
2 電流計によって記録された、杭工事の際の掘削時のオーガー駆動装置(杭打ち機の一部である。)の 電流値のデータのことをいう。
3 流量計によって記録された根固めの施工時間、根固めの範囲、根固め液としてのセメントミルク(水にセメントを添加混合したものをいう。)を注入するために掘削ビットを上下に反復する速度、セメ ントミルクの瞬間流量等を計測したデータのことをいう。根固めとは、杭の先端部に、根固め液として、あらかじめ定められた量のセメントミルクを注入して杭の先端部を球根状にし、杭の先端部をあらかじめ設計されたとおりに固定する作業のことをいう。
4 DW 工法の詳細については、第2章において述べる。
5 付属棟の杭工事には、DW工法とは異なる工法(RODEX 工法)が用いられたことから、本中間報告書でいう本件マンションには、付属棟を含まないこととする。なお、本件マンション及び付属棟の杭工事では、合計 810本のが打設されたところ、本件マンションについて、DW工法により打設された杭は473本であった。
6 小林氏は、2007 年(平成 19 年)4 月から 2012 年(平成 24 年)3 月まで、旭化成建材の代表取締役社長を務めた。
7 前田氏は、本件杭工事施工当時、旭化成建材の役職には就いていなかった。
8 当時の旭化成建材基礎事業部パイル営業部・営業グループ長である。
9 以下に記載する法令は、特段の言及がない場合は基準日時点のものであり、本件杭工事施工当時の 法令を記載する場合には、その旨明確に言及することとする。
10 旭化成ケミカルズ株式会社、旭化成ホームズ株式会社、旭化成ファーマ株式会社、旭化成せんい株式会社、旭化成エレクトロニクス株式会社、旭化成建材、旭化成ライフ&リビング株式会社が事業会社である。
11 大臣認定の詳細については、下記Ⅳのとおりである。
12 基礎の許容支持力とは、建物荷重等の外力に対してが支えることができる最大荷重(極限支持力)を基に安全率(余裕率)を考慮して設定された数値をいう。
13 の支持力が十分にあるかを確かめる試験のことをいう。
14 一般社団法人日本建設業連合会「高支持力埋込み杭の根固め部の施工管理方法の提案-より良いを 実現するために-」(2013)1 頁、梅野岳「工法紹介 技術認証取得工法一覧」基礎工 42巻2号(2014)50 頁
15 この点は、本件杭工事についても同様であるため、本中間報告書においては、法令上は建築主が行うべき業務であっても、設計者であるSMCが行ったものとして記載する。
16 法令の定める基礎伏図の一部である。
17 基礎・地盤説明書で明示すべき事項は、以下のとおりである。
地盤調査方法及びその結果
② 地層構成、支持地盤及び建築物(地下部分を含む。)の位置
③ 地下水位(地階を有しない建築物に直接基礎を用いた場合を除く。)
④ 基礎の工法(地盤改良を含む。)の種別、位置、形状、寸法及び材料の種別
⑤ 構造計算において用いた支持層の位置、層の構成及び地盤調査の結果により設定した地盤の特値
地盤の許容応力度並びに基礎及び基礎の許容支持力の数値及びそれらの算出方法
18 社団法人日本建築学会『建築基礎設計のための地盤調査計画指針』(1985)
19 一般的に、構造物の鉛直荷重を基礎や杭で伝達して、その構造物を支えることができる地盤又は地層のことをいう。
20 なお、主任技術者監理技術者では、基本的な役割は同じであるが、必要な実務経験年数や取得する国家資格などが異なってくる。なお、監理技術者は、上記1の工事監理者とは別の役割を担う者である。
21 請負代金の総額が2500万円以上(建築一式は5000万円以上)の工事である。
22 施工人員とは、オペレーター、手元工、溶接工、プラント工、油圧ショベル工等を指す。以下同様である。
23 なお、本件杭工事の「現場代理人」は、建設業法19条の2が定める「現場代理人」とは異なる。
24 「建築物の構造上の基準その他の技術的基準に関するものに基づき国土交通大臣がする構造方法、建築材料又はプログラムに係る認定」を指す。
25 杭工事性能評価を行う指定性能評価機関は、
①一般財団法人日本建築センター、②一般財団法人 ベターリビング及び③一般財団法人日本建築総合試験所の 3 つである。工法の大臣認定を得るには、これら 3つのいずれかで性能評価を取得した上で、国土交通大臣に対し大臣認定の申請をすることになる(以上につき、一般社団法人日本建設業連合会「高支持力埋込み杭の根固め部の施工管理 方法の提案-より良い杭を実現するために-」(2013)1 頁)。
26 一般財団法人ベターリビング「建築基準法施行規則第1条の3第1項の認定に係る性能評価業務方法書」、一般財団法人日本建築総合試験所「建築基準法施行規則第1条の3第1 項に掲げる表三の認定に係る性能評価業務方法書」等
27 一般財団法人日本建築総合試験所「建築基準法施行規則第1条の3第1項に掲げる表三の認定に係る性能評価業務方法書」等
28 一般社団法人日本建設業連合会「高支持力埋込み杭の根固め部の施工管理方法の提案-より良い杭を実現するために-」(2013)1 頁

私見は、旭化成建材の中間報告書全文完了までは差し控えたいと思います。瑕疵欠陥損害賠償

文責 釈迦牟尼仏(ミクルベ) 建太

次回に続く(杭データ改ざん事件160111

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